この連載では、機械学習にまだなじみがないITマネジャーやエンジニアに向けて、ビジネスへの活用を前提に、機械学習とその応用について説明している。前回(機械学習は、なぜ「未知の問い」への答えを出せるのか)は、全体のイメージを把握していただくために、機械学習の基本的な仕組みを説明した。

 機械学習は万能の機械ではない。現在、ビジネスの様々なシーンで利用が進みつつあるが、機械学習だけでビジネス上の課題を解決しているわけではなく、多くの場合は他の技術や理論と組み合わせて利用している。

 今回はネット店舗(ネットショップ)での商品レコメンド(推薦)機能を例に取って、機械学習をどのように活用しているのかを具体的に説明したい。あまり見慣れない数学用語も出てくるが、専門的な知識は必要ないので、「知っていれば、ちょっと格好いいかも」くらいの軽い気持ちで読み進めてほしい。

ネット店舗で「説明してくれる店員さん」を実現する

 ネット店舗が登場したばかりのころ、多くの利用者は「リアルな店舗で購入する場合に比べて不便だな」と感じたに違いない。この時点では、商品そのものの情報や商品の評判といった関連情報を利用者自身が収集して、比較・検討しなければならなかったからだ。

 リアルな店舗であれば、「商品を説明してくれる店員さん」に尋ねればよい。そうした機能を、初期のネット店舗は提供していなかった。

 その後、ネット店舗は急速に普及するとともに、顧客を支援する機能を強化し、使い勝手がよいサービスへと進化していった。背景には、顧客の購入履歴やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上のクチコミなど、商品に関わる様々な情報をネットを通じて容易に入手・活用できるようになったことが挙げられる。

 その過程で登場した機能の一つが、利用者に適する商品を推薦する商品レコメンドである(図1)。

図1●商品レコメンド機能の例
図1●商品レコメンド機能の例
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