日本のIT業界のSEはいろんな問題を抱えている。しかもそれが50数年間、解決しないでいる。そしてSEはこの状況の中で、今も昔も一生懸命仕事をしている。

 だがSEの方々はそれでいいのか。顧客に張り付いて労働集約的な仕事をしていていいのか。営業に便利に使われていて、それでいいのか。受け身的な仕事のやり方をしていていいのか。IT偏重のSEが多くていいのか。ビジネスに弱くていいのか──。

 筆者は1997年から日経コンピュータやITproなどで約20年間、そんな思いをIT業界のSEマネジャーやSE、SE関係者に訴えてきた。そして日本のSEがその世界から脱皮し、変革するにはSEマネジャーやSEが何をすべきか、それについて筆者の経験を基に魂を込めて具体的に述べてきた。それらは全て筆者が現役時代やってきた事柄であり、決して机上の理論ではない。

 特にSEマネジャーの方に言いたい。その鍵を握っているのはSEマネジャーのあなた方である。SEマネジャー自身が汗を流して顧客を訪問し、顔を売り、部下を統率し、ビジネスと営業に強くなることが不可欠である。そして時には体を張って顧客や営業と闘うことも必要である。ぜひSEマネジャーの方々はそのために頑張ってほしい。

 筆者が訴えてきた内容は、日経コンピュータの連載を基に2000年に日経BP社より出した書籍『SEを極める50の鉄則』にまとめて書いた。その本は約10万冊売れ、IT業界のベストセラーと評された。また、それをきっかけに本屋にもSEの在り方に関する本棚もできた。きっとこの日経コンピュータの連載や拙著『SEを極める』は今の30代、40代のSEの方やIT企業のマネジメントの方々に何らかの影響を与えたものと思う。

 だが筆者が執筆を始めてから20年が経ち、それなりの年齢になった。ITの世界もインターネットの時代になるなど、システム環境も変わった。この20年を区切りに、筆者の執筆は今回のこの連載を最後にしたい。

 そこで今回はSEマネジャーやSE、SE関係者の方々に筆者の最後のメッセージとして、改めてSEが抱えている問題がなぜ解決しないのか、その根っ子の問題について書きたい。IT企業のSEマネジャーやSE、SE関係者の方々は馬場の最後の言葉だと思ってぜひ読んでほしい。そして日本のSEの変革に役立ててほしい。

体制図や人月の提示が最大の要因

 日本のSEが抱えている問題が解決しない最大の要因は、IT企業がシステム開発プロジェクトで顧客にSEの体制図を出したり、「何人月いくらでやります」などと人月を提示するビジネスのやり方である。いわゆるIT業界の因習的な「SEのモノ扱い」である。