筆者は第2回第3回で紹介したように、工夫を凝らした就活でどうにか自分の希望に合致した会社に転職できた。しかし実態はそう簡単な話ではない。繰り返しになるが中高年の就活の現実は本当に厳しい。もちろん中高年を受け入れる環境が良くないこともあるが、就活者自身の問題もある。今勤めている会社を本当に辞めるべきか、特に転職の目的を熟慮して明確にした上で決断して欲しい。

 例えば「激務から逃げたい」など、現実逃避が理由の場合は転職によって一時的に辛い環境から解放され一安心できるかもしれない。だが転職の目的が逃避であり、先のことが定まっていないため就活に立ち向かうまでの意識の転換に時間がかかり、前に進めなくなることが多い。そのため、今いる職場環境での辛抱と、就活の厳しさをてんびんにかけ、自暴自棄にならず慎重に決断することをお薦めする。

 また、第3回で述べたが、一定の資産がない転職は無謀だと言える。これは筆者の経験談ではあるが、退職すると不思議と想定外の出費が生じてしまった。一例になるがこれまで40年間無事故だったにもかかわらず自動車を立て続けにぶつけたり、30年間使っていたエアコンが壊れたり・・・。質素倹約に取り組んでいる身からすると「盗人に追い銭」的な気分になり、かなり落ち込んだ。他の転職者も不思議と同じような体験をしているようで、資産の見立ては余裕を持った方がよいだろう。

 中高年の就活でなにより大事なのは覚悟だと筆者は思う。よく聞く話だが「なんとかなるさ」はなんとかならない。覚悟を持って退職しない場合、「辞めなければよかった」といった猛烈な後悔の波が襲ってくる。転職・異動を繰り返してきた筆者でも今回の就活に際しては少なからずこの波が襲ってきた。就活に立ち向かう覚悟がないとまずこの後悔の波を乗り越えられない。そのためにも覚悟が必要なのだ。

 では具体的にどのような覚悟なのか。それは、これまでの回で述べてきたように、

  • 会社が変わってもそれを受け入れることができる自身の覚悟
  • 所得が大幅に下がった時に身の丈に合ったライフスタイルに変えることができる覚悟
  • 辞職に至った理由はなんであれ、明確な目的を持って就活に立ち向かう覚悟

 である。そして覚悟とは異なるが、非常に大事なことは「やりがい」のある仕事ができるかどうか、ということである。「やりがい」のある仕事ができなかった場合、転職後に「こんなはずではなかった」と悩むことになるからだ。ただし「やりがい」とは自身の考え方ひとつで変わるものであり、何の変哲もないと思われる仕事でも、「やりがい」のある仕事に変えられる。「やりがい」のある仕事ができれば、たとえ所得が減っても毎日生き生きと仕事ができる。この辺りは次回述べたい。

 読者の中にはつらい仕事が続き、本当に困難な状況の中、真剣に自分の進退を考えている方もいるだろう。特に中高年のスタートとなる40代のITエンジニアは途端に責任範囲が拡大し、仕事に猛殺され困難な状況になるケースが多い。少なくとも筆者の場合はそうであった。だが筆者の経験上、そんな時こそつらい状況に立ち向かい、どう乗り越えるかを第一に考えて欲しい。少し余談になるが筆者も筆舌に尽くしがたい経験をした時期があった。二つ紹介したい。