筆者は2015年9月、56歳で誰もが知る大企業A社を辞職し、57歳で就職活動を開始した。そして見事転職に成功。本コラムはITエンジニアである筆者が実際に体験したシニアの就活の実情や、筆者の就活プロセスを全て公開し、次の人たちの役に立ってほしいとの思いでつづったものだ。

  1. 会社事情などで就活を考えなければならない人
  2. 漠然と転職を考えているシニア層の方々
  3. 就活で悩み、壁に直面している人達

 第1回は、筆者がどのような道を歩んで再就職に至ったかを紹介したい。

なぜ大企業A社を辞めたのか

 最近毎日のようにメディアを賑わす大企業の「構造改革」。だが実際には、「構造改革」の名の下、被雇用者側からすれば大規模なリストラが進んでいると感じられる場合も少なくない。最近はシニアに限らず、40代はおろか30代にまでその対象範囲は広がりつつある。

 筆者は日本を代表する製造業の大手企業(以下、A社)に部長職として勤務していたが、2015年6月、漠然と転職を考え始め、同年9月に辞職した。翌10月某日は筆者57歳の誕生日。A社で部長職と言えば世間的には勝ち組と言われる。その地位をなげうって、年齢的に再就職が不利なことを承知の上で辞職し、就職活動を始めた。そしてこれから本コラムで紹介していく様々な経緯があり、縁あって社員20人の小規模企業、国産にこだわる業務用ヘッドセットを開発・販売するN社に転職した。

 最初に、A社をなぜ辞めたのかを説明していこう。その理由は簡単に述べれば以下の2点になる。

  1. 自分に合わない仕事をあと3年間やり続ける気力がなくなったこと
  2. これまで培った経験を生かし、生き生きと仕事をしたかったこと

 当然辞職すればA社の部長職として得られていた高待遇、社会的信用、地位、そしてこれまで自分を支えてくれていた仲間を失うことになる。しかし詳しくは後述するが「得意のスキルでもう一度社会にチャレンジしたい、できれば社会に貢献したい」との思いが次第に強くなり辞職に踏み切ったのだった。

想像以上に厳しいシニア就活、いきなり出はなをくじかれる

 だが、実際に辞職すると、“世の中そんなに甘くない”ことを痛感することになる。いざ就活する立場の身に立つと最初に戸惑うのはシニアが就活するための情報が極めて少ないことだ。あるのは一般論に終始した具体性に乏しい実用本、ブログなどが大半。筆者が当時欲しかった情報は、たとえ業界、就活プロセスが違っていても実体験の話である。だが、そんな話はどこにもない。辞職してまず直面したのは、想像していた以上に厳しいシニアの就活事情である。何となく自分の経験を生かせる転職先があると思っていたのだが、いきなり出はなをくじかれた格好だ。

 しかし今振り返ると実用本やブログが役に立たないかというとそうとも言えない。断片的ではあるがそれなりの示唆がある。就活するとなったら、こういった情報収集も重要だと今更ながら思う。

 そんな状況の中、筆者は自分なりに調べ、工夫を凝らして就活に立ち向かい、その結果、「3勝1敗1引き分け」の成績を収め、無事転職を果たせた。こうした就活プロセスを説明する前に、まずは筆者自身がこれまでどんな社会人生活を送ってきたか、第2回以降の話を理解していただく上でも述べておきたい。