IoT(Internet of Things)の流行でさまざまなセンサーが登場し、そのうちの屋内向けセンサーの多くがBLE(Bluetooth Low Energy)を採用している。BLEの場合、ボタン電池1個で1カ月から最長1年ほど運用できる製品もある。

 しかし、運用期間が1年以上だったり、多くのセンサーを扱ったりすると、電池交換が大きな手間となる。電源の問題はIoTを考える上で、常に課題だ。

 そこで今回、無線規格「EnOcean」を紹介する。EnOceanが使う無線の周波数は、BLEのような2.4GHz帯ではなく、928MHz帯だ。928MHzは「サブギガ帯」と呼ばれ、サブギガ帯を利用する無線規格には、EnOceanのほかに「Z-Wave」や「Wi-SUN」などがある。

「自己発電」技術を採用

 こうした中でEnOceanの大きな特徴となるのが「エナジーハーベスティング」と呼ぶ自己発電の技術を採用している点だ。ボタンを押すといった物理的な動きによる電磁誘導や、電卓についている太陽光を利用した発電などが代表例である。

 エナジーハーべスティングで発生した電力は非常に小さいため、できることは限られる。電磁誘導による発電であれば、その動きが発生したタイミングでしかパケットが飛ばない。太陽光発電は暗い場所では使えない。しかしこうした制約があっても十分という利用シーンは数多く存在するはずだ。また製品によっては、充電池をバックアップ電源として用意しているものもある。

 EnOceanはドイツで生まれ、欧州や北米で以前からビル管理や工場管理の手段として使われ、近年ではスマートホームの分野で注目されている。日本では、EnOcean製品が登場してからはまだ日が浅い。無線免許不要な周波数帯として、サブギガ帯を開放したのが2012年と欧米より遅かったためだ。

 EnOceanは「EnOceanアライアンス」が、そのパケットを規格化しており、さまざまな製品種別ごとのフォーマットを規定している。メールアドレスを登録するだけで、EnOceanアライアンスのWebページから仕様書を無料でダウンロードできる。

EnOceanを実際に使ってみよう

 EnOceanを扱うためにはまず、PCなどからパケットを送受信するためのUSBドングルが必要だ。日本では、アーミンが販売するUSBドングル「EnOcean USBゲートウェイ USB400J」が4000円弱(2016年9月時点)で入手できる。

アーミンが販売するUSBドングル「EnOcean USBゲートウェイ USB400J」
アーミンが販売するUSBドングル「EnOcean USBゲートウェイ USB400J」
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