現実世界から収集したデータを基に3Dデータを作成して、バーチャルリアリティ(VR)で表現する。そのデータを基に、現実世界の作業に役立てる――。
VR技術や3Dプリンターなどを駆使して、医療現場を進化させようと取り組んでいるのが神戸大学大学院医学研究科 神戸大学医学部附属病院 内科学講座消化器内科学分野の杉本真樹 特務准教授だ。既に年間約50件もの臨床の手術現場で、VR技術や3Dプリンターなどを活用しているという(写真1)。
体を切り開かずに内部を確認
杉本 特務准教授が構築するのは、VR技術で人体の内部を見られるシステム。手術前に患者の体内を確認できる。このほか、あたかも手術をしているかのようなトレーニングにも活用できる。
活用例の一つを見ていこう。まず、患者の体をCTスキャンで撮影する。CTスキャンで得られるのは、2次元の平面で表現される画像データだ。この画像データを3Dデータに変換する。
CTスキャンで取り込んだ画像データを、3Dに変換して表現し直すのが、医療画像解析用アプリケーション「OsiriX(オザイリクス)」だ。オープンソースとして公開されており、無料で利用できる。二次元の画像データを3Dデータに変換する操作は数クリックだけで完結する。
杉本特務准教授は「誰でも簡単に人体の内部を3Dデータとして立体的に表現できる。患者一人ひとりが、病院でCTスキャンの撮影データをもらってくれば、自分の体内を3Dで見られる」とする。杉本特務准教授はOsiriXの日本語版操作マニュアルを作成している人物でもある。