IoT(Internet of Things)データ分析のクラウドサービス「Predix」を持つ米ゼネラル・エレクトリック(GE)。同社の狙いは、出荷後の製品や工場内の生産設備のデータを収集し、コンピュータ上で再現して分析する「デジタルツイン(Digital Twin)」の実現だ。

 デジタルツインは直訳すると「デジタルの双子」。現実の世界に存在するモノから様々なデータを収集し、そっくりそのままコンピュータ上で再現する。シミュレーションしたデータに基づいて、製品の稼働状況を全て把握。故障の予知などを可能にする。

 GEは製造する製品の「デジタルの双子」を作り、保守メンテナンスなどに活用している。GEで事業横断的にシミュレーション技術の研究開発を進めているエリック・タッカー氏にデジタルツインへの取り組みについて聞いた。

(聞き手は岡田 薫=日経コンピュータ


写真●GEグローバルリサーチ ITチーフテクノロジーオフィサーのエリック・タッカー氏
写真●GEグローバルリサーチ ITチーフテクノロジーオフィサーのエリック・タッカー氏
[画像のクリックで拡大表示]

デジタルツインでものづくりはどのように変わるのでしょうか。

 デジタルツインを使えば、工場から出荷した後の製品の状態を全て把握できます。出荷後のデータを使えば、新しいビジネスモデルやサービスを生み出すことができます。

 航空機エンジンの保守メンテナンスの事例で説明しましょう。

 ここに、二つのエンジンがあるとします。工場の出荷時は同じ状態で出荷されます。しかし、どの航空機に搭載されるかによって、その後の保守メンテナンス方針が変わってくるのです。

 例えば片方は、大阪と成田の間しか飛ばない航空機。もう片方はドバイとインドの間を飛ぶ航空機のエンジンに搭載されたとします。

 大阪と成田の間しか飛ばない航空機は、飛行距離は短い。一方、ドバイとインドの間を飛ぶ機体は飛行距離は長い。飛行距離が短い航空機の方が、飛行距離が長い航空機に比べて、航行の頻度は多いでしょう。

 それだけではありません。ドバイとインドの間を航行する航空機は、海上を航行する時間が長い、すると、塩分濃度の高い大気にさらされる時間が長くなります。

 エンジンにとって塩分は大敵で、その分劣化は早くなります。