写真1●アズビル 業務システム部 運用管理グループの松原健グループマネージャー
写真1●アズビル 業務システム部 運用管理グループの松原健グループマネージャー
(撮影:菊池くらげ)
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 計測・制御機器メーカーのアズビル(旧・山武)は、2016年6月1日から3日にかけて開催された「AWS Summit Tokyo 2016」で、Amazon Web Services(AWS)上でのSAP ERP(R/3)を用いた基幹システム構築をテーマに講演した。1万人が使う大規模システムのAWS移行を決断するまでの経緯や、約1年にわたって運用する中で何をメリットに感じ、どんな課題に直面しているかを語った。

 「担当者は、もやもやとした不安を抱えていた」。同社 業務システム部 運用管理グループの松原健グループマネージャーは、AWS導入の検討時をこう振り返る(写真1)。

 クラウド化の対象となったのは、生産、販売、在庫管理、人事、財務会計など事業の根幹を支える基幹システムで、ユーザー数は約1万人。事業のグローバル展開への対応などのためSAP ERPへの切り替えが決まり、その稼働基盤としてAWSを検討した。だが同社にはそれまでクラウドの活用経験がなく、不安が大きかった。

“もやもやとした不安”解消までの道のり

 そこでまず、コストや性能、可用性、拡張性など9項目にわたってクラウドとオンプレミス(自社所有)環境の比較を実施した(写真2)。オンプレミス環境に軍配が上がったのは、可用性と実績だけ。それ以外の項目は、同等かクラウドの方が優れている、という結果になった。

写真2●9項目でクラウドとオンプレミスを比較
写真2●9項目でクラウドとオンプレミスを比較
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 特にコストの試算では、BCP(Business Continuity Planning)対策用バックアップ環境の構築まで含めると、クラウドの採用によって4年間で1億円のコストを削減できることが分かった。

 だが担当者としての不安は消えなかったという。「自社で気付かないリスクがあるのではないか」(松原氏)との思いがぬぐえなかったためだ。

 想定外のリスクを洗い出すため、ハードウエアベンダーやコンサルティング会社など複数の企業に意見を聞いた。「データ転送に時間が掛かり、予定した移行期間内に作業が終わらない可能性がある」「他社と環境を共有するため性能にばらつきが出る」「障害発生時に原因を特定できない可能性がある」といった指摘を受けた。