「スマートフォンは高い!」

 プライベートやビジネスにスマートフォンを使っている人も、従来型携帯電話しか使っていない人も、基本的な印象はこの一言に尽きるだろう。

 そうした状況で、注目を浴びているのが、いわゆる「格安SIM」である。大手キャリアから設備を借りることで、自前で通信回線などのインフラを保有せずにモバイル通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)が提供するサービスのことだ。MVNOの格安SIMをうまく取り入れれば、低コストで使い勝手良くビジネスにスマートフォンを利用できる。

月額料金は安く、高速データ通信できる量が多い

 まず、格安SIMの現在の状況を確認しておこう。格安SIMには多数の事業者が参入していて、様々なプランを提供している。ここでは中小企業や個人事業主が使うことを想定し、ビジネス利用ではあるが法人契約ではなく個人契約をする(大量導入による特別な割り引きはない)と考えて情報を見ていこう。

 まず、格安SIMの提供形態だ。格安SIMには、利用できるサービスによって3種類がある。「データ通信専用SIM」「SMS付きSIM」「音声付きSIM」だ。このうち、ビジネスで使うスマートフォンに最も適しているのは、「音声付きSIM」だろう。

 通常の携帯電話番号を持ち、固定電話や携帯電話に今まで通りに電話をかけたり、かかってきた電話を受けたりすることができる。MNP(携帯電話番号ポータビリティ)を使えば、これまで使ってきた携帯電話の番号を引き継いで使うこともできる。

 音声付きSIMは、格安SIMの3種類の大分類の中では、最も料金が高いプランになる。その音声付きSIMの料金で、2016年6月上旬時点の大手キャリアの通常の料金プランとのコストの差を見ていこう。

図1●インターネットイニシアティブの「IIJmio」と、大手キャリア(KDDI、ソフトバンクの最安プラン)の料金比較(2016年6月上旬時点)
図1●インターネットイニシアティブの「IIJmio」と、大手キャリア(KDDI、ソフトバンクの最安プラン)の料金比較(2016年6月上旬時点)
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 大手キャリアでは、1回線の契約の場合に最も月額料金が安くなるのは、KDDIとソフトバンクが提供するプランで、月額4900円で利用できる。これは「5分間までの通話がかけ放題」というかけ放題系のライトプランの基本料金(月額1700円)にISP料金(月額300円)、1Gバイトまでの高速データ通信が可能なパケットプラン(月額2900円)を組み合わせたものだ。スマートフォンの月額料金が5000円を切るという意味では、高かった料金の変化の象徴ともいえる。