境界防御に使うファイアウオール/UTMが備えるパケットフィルタリングは、ステートフルインスペクションやウイルスゲートウエイなどの機能と違って、ユーザーが設定する必要がある。

 パケットフィルタリングだけで、サイバー攻撃を防ぐのは難しいが、きちんと設定しておけば、ウイルス侵入のリスクを減らせる。ウイルスに感染した場合でも、外部との不正な通信を遮断できる可能性がある。

 一方、設定が不適切だと、セキュリティ対策として効果がないばかりか、Webアクセスができなくなったり、メールが使えなくなったりする。一部の製品では、管理用のGUI画面などが用意され、慣れていない担当者でも操作しやすくなっている。ただ、CUIベースの製品もまだ多く、設定手順に戸惑うケースがあるだろう。Part4ではパケットフィルタリングの設定方法を解説する。

設定するのは対象と処理内容

 パケットフィルタリングでは、送られたパケットの通過を許可するか拒否するかを設定する。具体的には、(1)対象を決める、(2)対象ごとの処理を指定する――の繰り返しである(図4-1)。

図4-1●対象と処理内容を設定する
図4-1●対象と処理内容を設定する
ファイアウオールでは、指定した条件に合致するパケットにどういった処理を実行するかを設定する。
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 対象の指定には、送信元と宛先のIPアドレス、プロトコルの種類、ポート番号を使う(図4-2)。

図4-2●宛先/送信元のIPアドレスとポート番号、プロトコルを使って指定する
図4-2●宛先/送信元のIPアドレスとポート番号、プロトコルを使って指定する
パケットのヘッダーに記述された宛先/送信元のIPアドレスやポート番号、プロトコルの種類(TCP、UDP、ICMPなど)を使って、処理対象のパケットを指定する。
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 送信元、宛先の指定には、IPアドレスかホスト名を使う。すべての送信元または宛先を指定するときは、「ANY」と指定すればよい。

 プロトコルの種類は、「TCP」「UDP」「ICMP」といった通信プロトコル名で指定する。ICMPとは、ping(ピング)コマンドやtracert(トレースルート)コマンドで使用するプロトコルである。

 アプリケーションごとに通信の許可/拒否を決めたいときは、ポート番号で指定する。

 一部の製品ではポート番号の代わりに、「HTTP」「HTTPS」「SMTP」といった具合にアプリケーションが使うプロトコル名でも指定できる。これらの指定は、HTTPであればTCPの80番ポート、HTTPSであればTCPの443番ポートを指定したときと同じ設定になる。一般的によく使われるポート、いわゆるウエルノウンポートが指定されるのだ。このため、例えばWebサイトにアクセスできるユーザーを限定するために、HTTPを8080番ポートで運用するときは、「HTTP」ではなく手動で「TCPの8080番ポート」と指定する必要がある。

 パケットフィルタリングでアプリケーションの識別に指定できるのはポート番号だけである。Webアプリケーション制御のように、Webアプリケーションの種類までは指定できない。