IT部門の弱体化が指摘されて久しい。既存のシステムの運用に汲々とするだけで、経営や事業部門のニーズに全く対応できていないとして、IT部門を解体すべしとか、ITベンダーにフルアウトソーシングすべしといった”暴論”を語る識者も登場する始末だ。私から言わせれば、全くのナンセンス。IT部門がこれからも重要な経営機能でなければならないことは、この特集で記してきた通りだ。

 もちろん、IT部門の弱体化が進んでいることは、事実として受け入れざるを得ない。重要な経営機能を担う組織としては、人材などのリソース面でも、ケーパビリティーの面でもIT部門が全く足りていないのは明白だ。だが、経営者に絶対に認識してもわらなければいけないことは、こうしたIT部門の弱体化の責任の一端は、歴代の経営者にもあるということだ。

 「ITを分からない」経営者は、IT部門が担う経営機能の重要性に思いが至らず、単なるコストセンターと捉え、アウトソーシングや人員削減などのリストラを進めることで、IT部門の弱体化を進めてしまった。結果として、IT部門はシステムの内製力を失い、新しいテクノロジーに対する目利き能力も失った。IT部員は目の前のシステム運用業務に手一杯で、自社のビジネスの全体像や将来像を俯瞰することもできなくなってしまったのだ。

 従って前回に示したように、まずはCIO(最高情報責任者)が経営戦略のHowとしてIT戦略を明確に語れるようにすることで、経営者にCIO自らとIT部門の経営機能としての重要性を認識させなければならない()。それがIT部門再生に向けての最初の一歩だ。

図●経営者にCIOが言うべき5つのこと(その5)
図●経営者にCIOが言うべき5つのこと(その5)
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 その上で、IT関連予算の権限やIT人材などは可能な限り、CIOやIT部門に集中させる必要もある。もちろん、デジタルビジネス関連など事業部門の予算にしたほうがよいものもあるが、その場合でも、IT投資や支出については必ずCIOの承認を必要とするといった統制上の仕組みがなければならない。経営者やCFO(最高財務責任者)、事業部門の担当役員にこれを認めさせることはとても重要だ。

 IT人材面についても、可能な限りIT人材はIT部門に所属としたい。最近、企業によってはデジタルビジネスを担う新たなIT組織、いわゆる”第2の”IT部門を設置する動きがあり、私もそうした動きを全く否定するわけではない。ただ、ITを担う組織はIT部門に一元化したほうがよいと考えている。IT人材についてもIT部門の所属とすべきである。