これまで手順を紹介してきたように、Windowsには様々なリカバリー機能がある。これらの機能の特性を把握して、用途に応じて使い分ける必要がある。
バックアップとリカバリーの機能について表1についてまとめた。今回の記事では手順を紹介していないが、データ保護機能としてネットワークストレージ(ファイル共有やOneDriveなど)とメーカープリインストールマシンにあるリカバリーメディア作成機能を入れてある。
名称 | システム復旧 | データ保護 | 外部メディア容量 | サイクル | 作業時間 | 作業時間に関係する項目 |
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ファイル履歴 | × | ○ | 無制限 | 10分 | 短い | - |
Windows バックアップ | ○ | ○ | 最低数10GB~ | 1日 | 数十分~数時間 | 対象ファイル数 |
システムイメージの作成 | ○ | ○ | 内蔵HDDと同程度 | 手動 | 数十分~数時間 | Cドライブの利用量 |
復元ポイント | ○ | × | 不要 | 変更の都度 | 短い | - |
ネットワーク ストレージ | × | ○ | 不要(要ネットワーク) | 変更の都度 | 数分~数時間 | 変更ファイル総量とネットワーク接続速度 |
リフレッシュ/リセット | ○ | × | 不要 | 手動 | 1~2時間程度 | システム性能 |
起動メディア (回復ドライブ、システム修復ディスク) | △ | × | 512MB~32GB | 手動 | 数分~数十分 | Windowsフォルダーのサイズ |
× | × | DVD1枚 | 手動 | 数分 | ドライブの書き込み速度 | |
メーカー リカバリー機能 | ○ | × | メディア作成用。機種依存 | 手動 | 1~2時間程度 | 回復パーティションのサイズ |
インターネットストレージサービスは、リカバリー機能ではないが、ユーザーデータを、クラウド側(インターネット側)のストレージで保存する。このため、PCのハード問題の影響を受けない。Windows標準のOneDriveやその他のサービスでも、PC上のフォルダーとの同期機能があり、データを2カ所で記録することが可能になる。
ディザスタ・リカバリーというのは大げさだが、災害などで機器が全て利用不可能になったとしても、データを残せる。企業や組織などでは、インターネットストレージの利用は許可されていないかもしれないが、ファイル共有やオフラインファイル(コントロールパネル→共有センター)、ブランチキャッシュなどを利用することで、ユーザーデータをファイルサーバー側に置くことが可能だ。
出荷状態に戻すならメーカーのリカバリー機能
WindowsプリインストールのPCには、必ず購入時の状態に戻せる「メーカー回復パーティション」がある。ほとんどのメーカー製PCでは、この内容を基にした「メーカーリカバリー機能」があり、大抵は、「メーカーリカバリーメディア」を作成できる。技術的には、Windowsのリセットやシステムイメージ+回復ドライブによる復旧と同じで、Windows REやドライブイメージの保存機能を利用している。
この機能の最大の特徴は確実に「工場出荷時」の状態に戻せる点だ。これに対して、Windowsの「リセット」は、アップグレード経歴などにより、どの状態に戻るのかが異なる。例えば、Windows 8から8.1を経由してWindows 10にしたPCでは、リセット、リフレッシュではWindows 10にしか戻せない。
メーカーリカバリー機能だけが確実にプリインストールマシンを工場出荷状態に戻せる。一方で、メーカーリカバリー機能は、メーカーによりアプリや操作、起動方法などが異なる。このため、方法を理解していないと障害発生時に慌ててマニュアルを探すといったことになりやすい。PCを入手したらメーカーリカバリーメディアは必ず作成しておき、同時にマニュアルの該当部分に目を通しておくべきだろう。