筆者は音楽好きである。その音楽の聴き方は、時代とともに変わってきている。それが大きく変わったのは、iPodなどの音楽プレーヤーの登場だったと思う。
iPodの登場前は、据え置きの大きく豪華なオーディオシステムで、聴くのはもっぱらCDだった。ところがiPodを使うようになってからは、これを既存のオーディオシステムにつないで音楽を流すようになった。青木家では、オーディオシステムとiPodの接続にオンキョーのデジタルメディアトランスポート「ND-S1」を、1階と2階のオーディオシステム用に2台導入して使っていた。デジタルメディアトランスポートとは、音楽のデータをデジタル信号のまま(アナログ信号に変換することなく)送る機器である。ND-S1の発売は2009年だから、もう9年近く前になるだろうか。その後iPodはiPhoneに変わり、30ピンのDockコネクタはLightningに変わった。
Bluetoothスピーカーの登場は大きかった
このiPodとND-S1の世界が一変したのは2013年あたりのことである。2階の居間に「SRS-BTX500」というソニーのBluetoothスピーカーを導入して、iPhoneやiPod Touchをはじめ、Android、各種PCなどからワイヤレスで音楽を飛ばして聴けるようにしたのだ。再生や停止、曲目やプレイリストの選択、音量、スピーカーそのもののオン/オフなど、ほぼ全てを手元でコントロールできるので非常に便利だ。その手軽さに、既存のオーディオシステムからは、だんだん遠ざかるようになっていった。
Bluetoothスピーカーで流すのは、当初はiPod Touchやスマートフォンのストレージにコピーした音楽ファイルが主だったが、だんだんネットラジオやApple Music、Google Music、SpotifyやAmazon Musicなどの音楽ストリーミングサービスにシフトしていった。ストリーミングサービスにない自分所有の曲目も、Appleのクラウドサービス「iTunes Match」を契約しているので、スマートフォンのストレージを圧迫することなく快適に音楽を楽しめる。
ワイヤレススピーカーの音は、「もともと聴くのが128kbpsとか256kbpsなどの圧縮音源なのだから」と割り切って、あまりこだわることもなかった。だがあるときから、よく聴いてみると、スマートフォンのヘッドフォンジャックから直接スピーカーにケーブルで接続して聴くのに比べ、ワイヤレススピーカーで聴く音はずいぶん劣化している感じを受けるようになった。さらに同じ音源でも、電波で飛ばす機器によって音質に差があることに気付いた。