ビジネス向けのモバイルノートPCを中心にWiGig対応をうたう製品が増えてきた。WiGigは、60GHz帯を利用するIEEE 802.11adを基盤とした近距離のワイヤレス通信技術だ。10メートル程度の近距離ながら、最大7Gbpsという高速で、かつ低レイテンシーでデータを転送できる。

日本HPのノートPC「HP Elite x2 1012 G1」はWiGig対応製品の1つ。様々なインタフェースをまとめたドッキングステーションを無線で接続できる
日本HPのノートPC「HP Elite x2 1012 G1」はWiGig対応製品の1つ。様々なインタフェースをまとめたドッキングステーションを無線で接続できる
(出所:日本HP)
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60GHzの超高周波帯で7Gbpsの高速通信

 WiGigの仕様は、米インテル、米マイクロソフト、NECなどが設立した業界団体「WiGig Alliance」によって2009年に策定された。その後IEEEでIEEE 802.11規格に取り込まれ、標準化されている。また、WiGig Allianceは2013年にWi-Fi Allianceに統合されている。

 WiGigは、WiGig Allianceにおけるブランドである。規格名としてはIEEE 802.11adと称するべきかもしれないが、現状ではWiGigという名称のほうが広く認知されている。WiGigの概要を簡単にまとめると以下のようになる。

  • 最大7Gbpsの通信速度をサポート
  • 携帯電話などの低消費電力の携帯機器からハイパフォーマンスなPCまでカバーできるデザインと電力管理機能
  • Wi-Fiと同様のネットワーク実装環境のサポートにより、2.4GHz、5GHz、60GHzを含む複数の周波数帯の(事実上の)同時利用が可能
  • ビームフォーミングにより、10メートルを超える距離での通信をサポート
  • AES暗号化アルゴリズムによるセキュリティ保護機能
  • HDMI、DisplayPort、USB、PCI Expressなどのプロトコルの無線環境へのネイティブ実装

1チャンネル2.16GHz幅の広帯域で高速伝送を実現

 WiGig/IEEE 802.11adでの通信は、60GHz帯を利用する。ライセンス不要でグローバルで使える帯域であるが、無線LAN規格で使われる2.4GHz帯や5GHz帯に比べて非常に周波数が高い。

 電波の周波数は高いほうが一定時間内にたくさんのデータを送れるため転送速度を高めやすい一方、減衰しやすく、障害物を回りこみにくいという特性がある。WiGigも原則的には障害物に弱く、伝送距離も短い。IEEE 802.11acなどの無線LAN規格では50メートル、100メートルといった距離が想定されているのに対し、最大でも10メートル程度にとどまる。