みなさんの周りで、最近「今度の休日、みんなでボドゲする?」「仕事の帰りにあの店で一杯やりながらボドゲしない?」といった声を耳にすることが増えていないだろうか。会社によっては「ボドゲ部」なるものも存在しているかもしれない。

 ここでいうボドゲとは、「ボードゲーム」のこと。日本で「ゲーム」というと、「プレイステーション」などの家庭用ゲーム機やPC、ブラウザーゲームといったデジタルデバイスで動作するものを指すことが多い。しかし最近は、“昔ながらの”テーブルの上にゲーム盤を広げて、駒やカードを使ってゲームをする人が増えている。

「大人の遊び」として企業対抗戦も

 「ボードゲームのどこがそんなに面白いの?」という質問は今でもよく受ける。質問をする人は大抵「端的で分かりやすい答えを1つ2つ」を望んでいるが、ボードゲームの魅力はなかなかそう簡単に言い表せない。

 目の前にいる相手のゲーム中における表情や口調といった「静かな対話」も面白いし、モノとして存在する駒を自分の手で動かすという行為も楽しい。全体を見渡せるゲーム盤の上で展開するボードゲームは見通しがいいからストレスがたまることはないし、自分が思いついたルールの改良や駒のドレスアップが自分で簡単にできてしまうのも興味深い。筆者がその答えをしようとすると、大きなところから細かいところまで好きと思うことが次から次と出てきてしまい、収拾がつかなくなってしまう。

 それほどまでに、ボードゲームの魅力は語りつくせない。ただ、筆者の場合は、やはり、目の前にいる人間を相手にものとして存在する駒をゲーム盤の上で動かす楽しみが、ボードゲームをやろうとする動機の大きな部分を占めているのは間違いない。

 これらは「ボードゲーム」や「カードゲーム」と呼ばれるが、最近ではまとめて呼ぶ名称として、デジタルデバイス用ゲームに対する「アナログゲーム」という名称を使う人が増えている。電気を使わないことから「非電源ゲーム」という言葉も使われている。

 そうした、電気を使わない、半導体もトランジスターも入っていない完全アナログのボードゲームやカードゲームを楽しんでいる人が急増している。筆者が勤めている、従業員200人程度の情報サービス会社にも「ボドゲ部」(ボードゲーム部)が存在しているし、IT関連で著名な様々な企業にもボドゲ部があることを確認している(企業対抗戦もしばしば行われている)。さらに、アナログゲームイベントを開催しているコミュニティに有名IT企業の有志が会場を提供することもある。

アナログゲームイベントを開催しているコミュニティの一つ「リアル&アナログゲーム好きのための会」。有名IT企業の有志が会場を提供することもある
[画像のクリックで拡大表示]
アナログゲームイベントを開催しているコミュニティの一つ「リアル&アナログゲーム好きのための会」。有名IT企業の有志が会場を提供することもある
(出典:リアル&アナログゲーム好きのための会Facebook)

 ボードゲームの盛り上がりは、特にIT業界だけというわけではなく、日本を含む、世界中で共通している。昨今の盛り上がりを紹介する前に、日本でのボードゲームがどういった状況だったかをまとめておこう。

アナログゲームのブームをデジタルが支える

 伝統的な将棋や囲碁、麻雀は別格として、「ゲームは子供が遊ぶもの」と言っていた日本でも、1980年代にボードウオーゲームが「大人が遊ぶボードゲーム」としてブームになり、1990年代後半からは、「カタンの開拓者」などのドイツで登場したボードゲームが広く遊ばれるようになった。

 ボードウオーゲームが一時期「絶滅寸前」まで落ち込んだが、ドイツゲーム(最近ではユーロゲームと呼ぶことも多い)はその登場から現在に至るまでその勢いは止まらない。ゲームデザインや対象となるプレーヤー層の違いといったゲームとしての本質的な部分もあるが、大きな理由の一つとして、昨今のSNSによる情報拡散力の違いは無視できないだろう。