訪日観光客増の持続的なサイクルを作る。インバウンド向け事業の要諦はこれにつきる。

 そのカギを握るのがITの活用。中でもネットサービスとリアル店舗の接客を組み合わせたO2O(オンライン・ツー・オフライン)施策だ。一見のお客様をお得意様に変える、国境をまたいだO2Oの取り組みが始まっている。

幕張にある「バトラープレナ幕張」の店内
幕張にある「バトラープレナ幕張」の店内
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 千葉市・幕張。ここにデジタル技術を活用したインバウンドの将来像が垣間見える小売店がある。「バトラープレナ幕張」。一見すると普通のドラッグストアだが、実は中国で多数の利用者を持つスマートフォン決済サービスを整備。訪日中国人客を主な顧客に想定した、インバウンドの「実験店舗」なのだ。

 利用できるスマホ決済サービスは「WeChat Payment」と「QQ Wallet」の2種類。いずれも、中国の3大ネット企業の1社であるテンセントが運営する。それぞれ世界で数億人規模の利用者を持つコミュニケーションサービスの「WeChat」「QQ」の付加サービスだ。

WeChatとQQのスマホ決済が使える
WeChatとQQのスマホ決済が使える
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 店員は店側のタブレットに決済金額を入力。利用者が自身のスマホに表示させたQRコードを、店側が読み取り機で読み取って支払いが完了する。商品の代金は、利用者があらかじめ登録したクレジットカード情報を使って決済する。

スマホ画面のQRコードを読み取って決済する
スマホ画面のQRコードを読み取って決済する
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 同店舗を運営するウィ・ジャパンは、WeChatなどの日本事業を担当するネットスターズのグループ企業。化粧品や食品、日用雑貨に加え、訪日客向けにテストマーケティングをしたい企業から新商品を出品してもらっている。WeChat Payment自体、大丸松坂屋百貨店やロフトが導入するなど決済サービスとして日本でも広がりを見せつつある。