2010年に開発がスタートしたOpenStackは、「Amazon Web Services」「Google Compute Engine」「Microsoft Azure」などに代表される、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)タイプのクラウドインフラを構築するオープンソースソフトウエア(OSS)です。

 最近では、「Docker」や「Ansible」など、その他のOSSと組み合わせた活用も注目を浴びるようになりました。本特集では、まだOpenStackを利用したことがない読者を想定して、実際に動作するOpenStack環境を構築しながら、OpenStackの機能と使い方、さらには、内部の仕組みなどを解説します。

 「基礎編」では、1台のPCで試せるオール・イン・ワン構成での環境を構築した上で、仮想マシンインスタンス、仮想ストレージ、仮想ネットワークといった、OpenStackの基本機能を利用者の視点から解説していきます。第1回は、本特集を通して使用するOpenStackディストリビューション「RDO」の紹介と、RDOによる環境構築を行います。

OpenStackディストリビューションで環境を構築する

 OpenStackは、世界各国の開発者が参加する開発コミュニティによって、OSSとして開発が進められています。バージョンアップの頻度が高く、約半年ごとに新バージョンが登場するのは有名な話です。

 それぞれのバージョンには、「Austin」「Bexar」「Cactus」などのコードネームが付けられており、頭文字がアルファベット順に進んでいきます。2016年4月7日に、13番目のバージョンとして「Mitaka(三鷹)」がリリースされました。その前は、「Liberty」でした。

 OpenStackの開発者が開発・テスト用の環境を構築する際は、「devstack」というツールを利用するのが定番です。これは、インストール処理を記載したシェルスクリプトを集めたもので、インターネットで公開されているソースコードを用いてインストールを実施します。開発途上の最新のソースコードから環境構築する際は、必須のツールとなります。

 一方、OpenStackそのものの開発が目的でない場合は、わざわざ開発中のソースコードから環境を構築する必要はありません。事前にパッケージングされた「OpenStackディストリビューション」を利用できます。

 本特集で使用する「RDO」(https://www.rdoproject.org/)は、RPMパッケージの形式にパッケージングされたディストリビューションです。Fedora、CentOSなど、Red Hat系のLinuxディストリビューションにインストールして使用できます。Packstackと呼ばれるインストーラーが付属しており、オール・イン・ワン構成、あるいは、コントローラーノードとコンピュートノードを分離した構成などでのインストールに対応しています(図1)。

図1●Packstackによるインストール構成例
図1●Packstackによるインストール構成例
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