この連載では、2015年12月に始まったストレスチェック制度に関連して、NPO法人ITスキル研究フォーラム(iSRF)がITエンジニアを対象に実施したストレスに関する実態調査の結果を紹介している。

 前回(最大のストレス要因は対人関係よりも「仕事の負担」、同僚のサポートを得られず)はストレスチェック制度とは何かに加えて、IT職種におけるストレス要因、ストレス反応の状況、個人へのサポートの有無の傾向を紹介した。今回は「職業性ストレスモデル」と、高ストレス者の実態を見ていく。

労働の際に受けるストレスの仕組みをモデル化

 職業性ストレスとは労働の際に受けるストレスを指す。労働者はほぼ例外なく外からの刺激(ストレス要因)を受けるものだが、健康な人であれば通常、少しの時間で元に戻ることができる。

 ところが、多くのストレス要因がかかったり、長時間にわたりストレス要因を受けたりすると、健康だった人の身体や心に反応が生じる(ストレス反応)。それが悪化すると、うつのような病気につながる恐れがある。ただ、同じストレス要因を受けているにもかかわらず、ストレス反応を起こす人と起こさない人がいる。

 ストレス要因とストレス反応、健康障害はどう関係しているのか。ストレスに関する個人差はなぜ生じるのか。これらを解明するために、職業性ストレスに関わる仕組みをモデル化する試みがなされている。これが職業性ストレスモデルである。

 職業性ストレスモデルの代表例の一つを、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH:National Institute for Occupational Safety and Health)が公表している(図1)。

図1●職業性ストレスモデルの例
図1●職業性ストレスモデルの例
出所:米国立労働安全衛生研究所の資料を基に筆者作成
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