IoT ASIA 2016では、80以上の出展者による展示会がカンファレンスと同時開催されます。出展者は主にシンガポール、台湾、オランダの企業、一部スポンサーですが、その他にもシンガポールと経済的な交流を促進するイスラエルの団体、メディア、研究機関など幅広いです。

 最終回となる今回では、展示会の様子とそこから見えるアジアのIoT市場動向の分析をお届けします。

シンガポールパビリオン

図1●シンガポールパビリオンの様子
図1●シンガポールパビリオンの様子
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 シンガポールパビリオンは全パビリオン中最大で、来場者も全パビリオンで一番多いように見えました(写真1)。主な出展者は工場やビルなどのデータを監視・管理できる産業向けIoTデバイスメーカー、半導体メーカーでした。シンガポールの製造業は成長基調にあり、今後も設備投資は続くと思われます。この背景により、産業向けIoTデバイスメーカーは発展しつつあると言えるでしょう。以下、いくつか抜粋してご紹介します。

図2●工場向けセンサーメーカーのTCAM Technology
図2●工場向けセンサーメーカーのTCAM Technology
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 TCAM Technologyは産業向けセンサーと可視化ソフトウエアのベンダーです。シンガポールパビリオンでは他にも発電所などのプラント用のデータ可視化デバイス、スマートメーターとエネルギー使用量可視化ソフトウエアなど、類似のプロダクトが複数見られ、各々の差別化が難しいように思いました。

 今回のカンファレンスで基調講演を行ったIDC ASIAの副社長Charles R. Anderson氏は、IoTビジネスを行う際には「Me too!」リスクがあると説明していました。すでに流行っているデバイスと似たようなものを作ろうとすると、すぐにコモディティ化し、価値が下がってしまうというリスクです。FitBitなどのヘルスケア用のウエアラブルデバイスを例に取っていましたが、工業向けIoTデバイスの文脈でも同種の現象は起きると考えられます。各社ともに差別化要素を見つけるのは急務だと感じました(写真2)。

図3●@newtechの家庭用カメラモック
図3●@newtechの家庭用カメラモック
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 工業向けコンピュータを提供する@newtechブースでは一般消費者向けのホームオートメーション用デバイスを展示していました。スタッフによると販売はしておらず、現状は検証段階とのことでした。シンガポールブースに限らず、全般的に一般消費者向けのデバイスはあまり人気がなかったようでした。工業向けIoT市場より一般消費者向けIoT市場は進展していないと推測されます(写真3)。

図4●IoTデバイスと経理システムを連携させるIoT Billing
図4●IoTデバイスと経理システムを連携させるIoT Billing
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 今回シンガポールパビリオンで特に目を引いたのは「IoT Billing」でした。IoT BillingはセンサーなどのIoTデバイスから集めたデータの整理に加え、会計データを既存の経理システムに統合することに特化したソリューションを提供しています。IoT企業の収益源を明らかにするのが、このソリューションの目標です。例えばETCや関税システムによる課金情報をクラウドに収集し、経理システムに送れるようになります。既存のビジネスフローへの統合は、デバイスの管理、監視にとどまらず、今後IoTサービスが普及していくにつれ、さらに求められていくでしょう(写真4)。