2016年3月30〜31日、シンガポールにて「IoT Asia 2016」が開催されました。今年で2回目になる当イベントはアジア最大級のIoTイベントです。シンガポールという国の特徴を活かして、様々な国、人種の方々が企業、国家、自治体など参加し、それぞれのIoTプロジェクトを紹介、知見を共有します。

 全体の雑感としては、国ごとに事情が異なることもあり、日本にで生活していると思いも寄らない点で改善や国家的取り組みが行われている場合があります。まだまだ社会的整備が進んでいない国では、これから整備、建設される設備や施設について積極的にIoTを取り入れていこうとする動きもあります。それは日本にもまだない取り組みもたくさんあります。国土が広かったり、人口が少なかったりする中でIoTを駆使して生産性を上げようとする試みも数多く行われています。その意味では日本以外のアジア地域のほうが挑戦しやすい土壌があると言えるでしょう。

 IoT Asia 2016は以下の6つのカテゴリに分かれています。(1)〜(5)は講演です。講演としてはこれら以外に、総合的なキーノートがあります。

(1)データ解析
(2)工業
(3)アプリケーションデザイン
(4)ウエアラブル
(5)スマートシティ
(6)展示

 この特集では各トピックに分けて、筆者たちが参加した講演や展示の内容を紹介します。最初の今回は、キーノートを中心に紹介します。第2回は(1)と(2)、第3回は(3)と(4)、第4回は(5)を取り上げます。そして最終回は、展示を紹介します。

アジアのIoT市場は2019年に5000億ドルへ

写真1●Charles Reed Anderson氏
写真1●Charles Reed Anderson氏
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 IDC Asia/Pacificの副社長、Charles Reed Anderson氏によるキーノートです(写真1)。アジアにおけるIoTは、2019年には市場規模としては5000億ドルと予想しています。接続されているデバイス数を国ごとに比較すると、オーストラリアが最も多く8.5億台、今回会場となっているシンガポールは5.1億台と予想しています(写真2)。

写真2●2019年の各国のデバイス数
写真2●2019年の各国のデバイス数
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 この予測を実現していくためにも大事になる要素が三つ考えられるとのことです(写真3)。一つはステークホルダー同士の協力です。政府、企業、消費者が一緒にプロジェクトを推進しなければらないとしています。二つ目は未来のビジョンです。最後の三つ目は各ステークホルダーが感じるギャップを埋めていく必要があると言うことです。

写真3●IoTを促進するための3つのステップ
写真3●IoTを促進するための3つのステップ
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 IoTに対するイメージや目的はステークホルダーごとに異なります(写真4)。消費者にとっては車、ショッピング、健康、フィットネス、家、エンターテインメントがメインになるでしょう。政府は環境、エネルギー、公共交通機関、トラフィック管理などになります。企業はバリューチェーン、カスタマーサービス、輸送、製造そして自動化を期待するでしょう。2015年はこうしたギャップを埋め、より堅実なIoTが進むようになってきたといいます。

写真4●IoTのイメージ
写真4●IoTのイメージ
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