前回は、小規模事業所でデータを共有するなら、HDDを複数台内蔵するNASがお薦めであると紹介した。2台以上のHDDを搭載するNASではRAID(Redundant Arrays of Independent/Inexpensive Disksという技術を使い、保存したファイルを安全に保管できる仕組みが使えるからだ。今回はこのRAIDの基礎知識とNASに入れるドライブの種類について解説する。

冗長性の確保こそがRAIDの本質

 RAIDでは複数の物理ドライブをまとめて1つの論理ドライブとして扱い、読み書き性能を高めたり、物理ドライブの故障に備えたりできる。まとめる物理ドライブの台数によって、利用できるRAIDの種類(レベル)は異なる。物理ドライブをまとめた状態のことを「RAIDアレイ」「RAIDボリューム」と呼ぶこともある。

 RAIDの本質は「Redundant」、つまり冗長性の確保だ。例えば、単体のドライブ(1台のHDD)だけで構成されたNASの場合、ドライブが故障したら途端に中のデータにアクセスできなくなってしまう。NASの中のデータ自体をバックアップしていればよいが、最後にバックアップしてから作成されたファイルは復旧できないし、新しいNASを持ってきてデータを書き戻すまでは共有ストレージとして使えない。

 RAIDはドライブの故障に対する冗長性を確保することで「共有ストレージが使えない」状態を最小限にする。RAIDを構成しているドライブのうちどれかが壊れても動き続けるので、その間に新規作成分をバックアップしたり、壊れたドライブを新しいドライブに差し替えて「リビルド」し、共有ストレージとして正常な状態に復旧したりできる。

 ただし、RAIDがあればバックアップは不要、というわけではない。例えば、RAIDでは、操作ミスでファイルを上書きしたり、消去したりすることは救えない。上書きや消去は、RAIDを構成するドライブ間ですぐに反映されてしまうからだ。

NAS利用でもバックアップは不可欠

 また、RAIDといえども、復旧できる台数以上のドライブにトラブルが発生したら、ファイルは失われてしまう。NASでは、ドライブではなく制御部分や電源部分が故障することもある。普段はRAID構成のドライブを組み込んだNASを使い、定期的にNAS内のデータは別のストレージにバックアップするシステムを組み合わせるのが理想といえる。