IoTを実現するうえで最も重要なものの1つは、様々なデータを収集するセンサーです。これまで世界の最先端技術をリードし続けながら、首位の座を維持できなかった日本の電子産業が今、最も注力すべき要素技術は各種センサー技術です。センサーはアナログ的な要素が凝縮した職人的技術で作られており、日本に向いています。現時点で他国をリードしている分野と言えるでしょう。

 これからは、あらゆるセンサーに無線伝送機能を持たせ、IoT化していく必要があります。全ての電子機器は入力と出力を持っています。体温計で言えば、体温が入力であり、測定値を表示させることが出力です。これまでの出力は、人間に対する出力が一般的でした。IoTあるいはM2Mでは、出力は対人間ではなく対機械(Machine)となります。つまりはこれまで対人用の出力であった、ディスプレイや音、振動などが無線伝送に代わることを意味します。

 今後IoT化が進展すると、無線伝送機能を有したセンサーは1兆個にも増えるという試算もあります。ざっと1人につき10個程度のセンサー機器が割り当てられる計算です。

 これまでソフトウエアだけで情報サービスを提供してきたIT業界も含め、あらゆる業界・業種が無線伝送機能を有したセンサーを開発するか、もしくは既製品の調達する必要があります。無線機能を搭載したセンサーのデータを集約し、3G/LTE回線などを経由してクラウドのサーバーへ転送するゲートウエイも必要となるでしょう。

 本稿では、まずIoT向けセンサーデバイスを調達するユーザーに向け、何に注意してメーカーを選ぶべきか、ポイントを解説します。続いて、ものづくりを手掛けるメーカーに向けて、IoT時代のものづくりの在り方を提案します。

良いメーカーをパートナーに選ぶポイント

 前述の通り、今後1兆個もの無線伝送機能を有したセンサーを製造するに当たり、開発すべきセンサーは2極化すると予想されます。一つには、大量生産型のセンサーが挙げられます。これは汎用性が高く、スマートフォン(スマホ)や家電など多くの機器に内蔵される製品です。これらの生産は大工場を有する大手企業が担っていくでしょう。

 もう一方では、少量ですが、一部のユーザーや業種に特化したニッチなセンサーがあります。当社工場はこのような少量多品種の生産を得意としています。工場でものを作る際に必要なMOQ(最小発注数)は工場の規模などによって異なります。大手工場では10万個単位でのオーダーが必要となりますが、当社のような工場では3000個程度(場合によっては1000個程度)から生産が可能です。

 IoT時代を迎え、「無線伝送機能を有したセンサーなどを開発したい」もしくは「開発せずに既存品を調達したい」というニーズは爆発的に膨らむと予想されます。これまでソフトウエアだけでやってきた企業が初めてものづくりを手掛ける機会も増えてくるでしょう。そのとき最も気をつけなければならない点が、ハードウエアの設計・開発・製造・調達を行うパートナー選びです。では、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

 以降で当社を例に、IoT機器のパートナー選びで重要となるポイントを説明していきます。