昨今、IoTがキーワードとして広く叫ばれていますが、多くの人にとって実感がないのが現状ではないでしょうか。IoT社会とは、全ての物がインターネットつながっていて、モノが自律して情報共有する社会と言えるでしょう。このような仕組みを誰にも分かるような形で実現するのでは無く、意識されない形で実現されていることが重要です。
こうしたIoTの姿に最も合う用途の一つが、知らないうち(意識せず)に情報をクラウドに集めて処理をする、「見守りシステム」だと私たちは考えました。当社はハードウエアやソフトウエアを提供するビジネスから、システムを提供するビジネスに変遷してきましたが、その先の「サービスを提供するビジネス」として、見守りシステムに取り組んでいます。
本システムは、BLE(Bluetooth Low Energy)※1を搭載した既存のセンサーモジュールと無線メッシュネットワーク※2を活用することで実現しており、本格的なIoT社会実現に向けて解決するべき課題を先導的に抽出するモデルとしても有効です。
見守りシステムでの一番の課題は、電池の問題です。これは、全てのIoTシステムに共通する重要な課題と言えるでしょう。センサーモジュールや無線モジュールが電池だけで長時間動作するには次に課題を解決する必要があります。
●必要なときだけ最短時間で起動し、仕事を終えたら速やかにスリープ状態に移行する
●無駄な時間を省くために、複数の機器が同期する
●部品1個に至るまで、徹底的に最適化する
以降では、見守りシステムを例に、これら3つの課題をどのように解決したのか説明していきます。
BLE+メッシュネットワークで構築した見守りシステム
当社が開発した見守りシステムは、メッシュ状に構成された無線ネットワークの中に、BLEを搭載したセンサーモジュール(を持った作業者)が入ったときに、その位置を特定するシステムです(図1)。
例えば工場の作業員に適用すると、勤怠管理のほか、作業員が危険な場所に入ってないかの確認したり、適切な人員の配置や無駄な動きをチェックしたりできるので、作業の安全確保と効率化に役立ちます。さらにセンサーモジュールに加速度センサーを搭載すれば、作業員の異常(倒れたなど)をいち早く察知して、事故を未然に防げます。
このシステムの主な用途は、工場の作業員の見守りだけでなく、図2に示すように様々な分野への適用が期待できます。