現場担当者との打ち合わせに臨む、役員補佐の村田浩子氏(右)
現場担当者との打ち合わせに臨む、役員補佐の村田浩子氏(右)
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 英語研修と並び、KDDIが将来の幹部候補生を特別な舞台で鍛え上げる制度がある。役員補佐だ。

 3月上旬、東京・飯田橋のKDDI本社。グローバル部門の担当者との打ち合わせに臨んでいるのは村田浩子氏だ。村田氏は2015年4月から1年間、「事業統括担当役員付補佐」という肩書きで業務に就いている。直属の上司は代表取締役執行役員専務の石川雄三氏だ。

情報収集、分析……役員や秘書とともに、チームで課題解決

 役員を補佐する業務というと、まず頭に浮かぶのは秘書だろう。しかし役員秘書は別にいる。役員補佐に求められるミッションは、役員と同様に経営課題について情報収集や分析をし、考えを巡らせて、役員の意思決定をサポートすること。役員本人と、部長級の社員による「上席役員補佐」、村田氏のような中堅社員による役員補佐、そして秘書の4人がチームとなって経営課題の解決に取り組んでいる。

2〜3人の補佐と秘書が役員とともに、経営にまつわる業務を進める
2〜3人の補佐と秘書が役員とともに、経営にまつわる業務を進める
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 石川専務が出席する社内の会議や打ち合わせには原則として同席。月曜朝に開催される役員会議も例外ではない。社外の人との会合には同席しないが、事後に出席者からメモをもらい内容を把握しておく。そうした会議の補足資料を作成したり、経営課題について現場にヒアリングしたりするのも大事な業務だ。

 さらに就任から半年後の10月以降は「インターン」として、1週間単位で他の役員補佐と入れ替わる。石川専務以外の役員とも一緒に働く機会を設け、多角的な視野を持たせる狙いだ。

広がる視野、半月先の業務から「5年先の業界全体へ」

 1994年に新卒で当時の東北セルラーに入社した村田氏。途中、仙台から東京への転勤はあったものの、一貫してコンシューマー部門で「auショップ」などの代理店を支援する業務に従事してきた。役員補佐になる前は「日々の業務を追うばかりで、長くても半月先程度しか見ていなかった」という村田氏も、今は3〜5年先の KDDIグループや通信業界全体へと見渡す視点が広がったという。

 村田氏のように、役員補佐で全社的かつ中長期的な視点を養い、その後活躍する人は少なくない。特に女性では、2011年度の制度開始以来15人の女性社員が役員補佐になり、うち3人がその後部長に昇進した。「ダイバーシティ、女性活躍を進めていくうえで役員補佐は大きな役割を担っている」(人事部の間瀬英世ダイバーシティ推進室長)。