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 様々な色の線が数珠つなぎに配置されたこのアート。いったいなんだと思いますか。実はこれ、オーストラリアのシドニーで、携帯電話が基地局に送る制御用パケットである「シグナリング」を収集して分析したものなのです。作品名は「Cell Storm Rider」です。

 街中で携帯電話を持つ人々が移動したり集まったりすると、通信トラフィックに様々なパターンが出てきます。この作品はそのパターンをアートにしたもの。データサイエンティストのサンドラ・ラマンの手によるものです。

 この作品で扱ったデータは、シドニーでも屈指の混雑する鉄道路線であるノースショア線とストラスフィールド線で収集しました。3Gと4Gの両方に対応した携帯端末に、基地局とやり取りする信号データを収集する専用ソフトウェアをインストール。それをデータサイエンティストが持ってこの2つの路線に乗車し、信号データを収集しました。収集したあと、この信号データを基に携帯電話と基地局の接続状態を分析。通信トラフィックのパターンを調査しました。

 この調査により、「基地局ネットワークが最適化されているかどうか」や、「音声通話はつながりやすいかどうか」「ハンドオフ、またはハンドオーバーと呼ばれる携帯電話と接続する基地局の切り替わりが安定して行われているかどうか」などを把握できます。携帯電話の通信に関するパフォーマンスの問題を未然に防ぎ、携帯電話を利用する顧客のカスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)の改善にもつなげることができます。

 ちなみに、今回ご紹介するのは通信トラフィックのパターン調査ですが、このアートで採用した分析手法は、他の分野にも応用が可能です。データを活用して収益につなげる取り組みとしては、都市開発や小売店の出店分析、「顧客に対してどのような条件を提示したら購入してくれるか」といったマーケティングオファーにも適用することができます。