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 このアートは、86種類のスコッチウイスキー、詳しくはシングルモルトウイスキーの銘柄について、多種多様な味の違いと関連性をグラフで表現したものです。作品名は「Single Malt Sampler」。スコットランドのストラスクライド大学が提供する86種類のウイスキーのフレーバーに関するオープンデータを利用して、Teradata Asterで分析した結果です。データの詳細はあとで説明します。

 アートのなかで見える赤や緑の点(ノード)は、シングルモルトウイスキーの銘柄を表します 。線(エッジ)は似た味のウイスキーを結び付けるのに使っています。この線が太ければ太いほど、同じような味がします。またAsterには分析結果をビジュアルに示す際、傾向が同じものを同じ色に自動分類する機能があります。今回のアートの場合、緑色は甘口、赤は辛口の傾向にあるウイスキーがそれぞれ集まっていることが確認できました。

 例えば、緑の集まり内の左側に見える「Speyburn(スペイバーン)」と「Glenkinchie(グレンキンチー)」は重なり合っていることから、甘口の中でも非常に似た味になります。一方で、Speyburnに飽きて、新しい味にチャレンジしたい人は、アート上の右下の遠く離れた位置にある赤い点の「Ardbeg(アードベッグ)」を試してみてもいいかもしれません。

 700年以上の歴史を持つシングルモルトウイスキーの味の違いは複雑です。その違いを的確に伝えることは、専門家でなければ容易ではありません。しかし、このように2つのグル―プにマッピングして分かりやすい図があれば容易になる可能性が高まります。例えばバーやレストランで働くスタッフが接客する際、味の早見表として使用すれば、お客様の好みにあったウイスキーを提供することで、顧客満足度の向上につながるかもしれません。

 このような分析は、ウイスキーの他にもフードサイエンスの分野で広く利用することができます。この分析結果を、マーケットシェアや顧客セグメントなどのデータと掛け合わせることで、購買意欲の高い潜在顧客向けに新しいフレーバーの商品を開発したり、既存のブランドを新たな顧客セグメントに再ポジショニングしたりするなど、マーケティングに活用することもできます。

 また昨今、日本酒も製造技術が向上したことで様々な種類のものが登場し、日本酒ブームとも言われています。ですが味を表現する基準はまだ一般化されていないように見受けられます。そこで辛口・甘口、香りの濃淡などの属性データを活用して、このようなアートで表現すれば、日本酒を飲み慣れない人でも、もっと日本酒に興味をもって、楽しむことができるようになるかもしれません。