1992年、三菱自動車工業は主力製品の高級乗用車「デボネア」に、最先端の車間距離警報システムを初めて導入した。この技術は、今後10年間で500億米ドル規模の市場を形成することが見込まれる自動運転技術の基礎を築いた。

 現在では、30以上のテストベッド(試験用のプラットフォーム)と100を超える研究所が自動運転技術の開発に取り組んでおり、同市場は自動車業界の中でも急成長する市場の1つとなっている。

 フロスト&サリバンは、2030年までに自動車7台のうち1台はレベル3(条件付の自動運転)以上の自動運転機能を備えると予測している。自動運転技術は、もはやサイエンスフィクションではない。現時点では、自動運転の導入に向けた取り組みが開始されたばかりの段階だが、テスラモータズなどのベンチャー企業だけでなく、アウディ、フォード、現代自動車などのメーカーが取り組む半自動運転車は、じきに欧州と北米で売り上げを増やすだろう。

 自動運転の大きな波は、自動車業界に留まらず、他の多くの産業にも今後影響を及ぼしていく。これまで伝統的なモデルで行われてきた自動車業界の2つの柱、自動車保険とモビリティビジネスは、中期的には全面的な事業見直しを余儀なくされる。

自動車保険産業のビジネスモデルに及ぼす変化

 自動車保険産業は、年齢や走行距離など利用実態ベースの自動車保険がビジネスモデルに大きな変化をもたらしたとはいえ、現在でも過去データに基づくリスク評価を行う形態をとっている。しかし、自動運転技術の誕生により、このビジネスモデルが根底から変わる。