我々フロスト&サリバンは、人工知能(AI:Artificial Intelligence)が今後新しいビジネスモデルと市場機会を創出するという見通しに確信を持っている。各国政府は、納税者の税金の価値を最大限に生かすために、人工知能の活用に取り組むべきだ。

人工知能は「危なくない」

 人工知能は、未来型のスーパーインテリジェンスやサイボーグ、人類に対するその他のディストピア的な脅威とはほとんど無縁である。

 現在、特定の範囲に限定された人工知能を指す「アーティフィシャル・ナロー・インテリジェンス(ANI:Artificial Narrow Intelligence)に関して、ビジネスに応用されるアプリケーションにおける急激な進化が起きている。

 新たな人工知能アプリケーションを、「ビッグデータ 2.0」と見なす事は有益である。人工知能とは、ビッグデータから実行可能な洞察を導き出し、人間が関与することなく、その洞察に基づいて意思決定を行うもの。人工知能における価値はデータにあり、ソフトウエアにはほとんど存在しない。

 SiriやCortanaといった従来のANIアプリケーションが持つ実行能力は、事前に定義されたパラメーターの範囲内に限定されている。これらは自然言語処理が可能だが、実行可能なものは数種類に留まっている。一方で、これらの従来型アプローチによる人工知能は、意思決定を行うために多くの訓練データを必要とするため、新しい状況に上手く対処することができない。

人間同様、不完全なデータを基に動く

 それに対して機械学習は、プログラミングではなく、データから学習するようにシステムを訓練する。人工知能に対する、より安定したアプローチと言える。機械学習は、システムがルールに従うのではなく、むしろ不完全なデータ内でパターンを学習しなければならないような場合に、状況を進展させる。

 これは、人間が意思決定を行う仕組みを模倣している。なぜなら、人間はほとんどの場合、不確かなデータに基づいて意思決定を行うからだ。

 機械学習は、顧客のニーズといった将来の行動予測を行う上で、統合ビジョンや言語、運動処理において理想的な技術である。無人運転車や 会話をするロボットなど未来的と思われるアプリケーションは、機械学習システムを利用したものである。

 常に自己改革を行い、新しい事業の開発に成功している企業は、人工知能を活用することで新たな収益源の獲得に成功するだろう。 これらの企業は、人工知能を実用化することでコスト負担を避け、自動化された意思決定を通して、これまでにないほどの優れた効率性と生産性で事業を行うことを可能にする。