「マルチギガビットイーサネット技術」は、2015年の注目技術だ。既に敷設したケーブルを利用して、2.5G/5Gビット/秒といった1Gビット/秒を超える通信を手軽に導入できる。今はまだ、業界団体による仕様しかない状況だが、イーサネットの仕様を定めているIEEEの802.3委員会でも「2.5GBASE-T」「5GBASE-T」として標準化作業が始まっている。注目される理由は急速に発展してきた無線LANの高速化を生かせるからだ。既設の配線を流用しつつ高速化が可能になる。まずはマルチギガビットイーサネット技術が登場する背景を整理しよう。

LANケーブルはカテゴリー5e/6がまだ主流

 イーサネットは1980年代に産声を上げてから、30年以上にわたって常に進化してきた(図1)。イーサネットの普及は「10BASE-T」と呼ばれる、10Mビット/秒の規格の登場がきっかけだ。それまでの主流だった同軸ケーブルからツイストペアケーブル(より対線)にケーブルを変更したのだ。その後ツイストペアケーブルを使うイーサネット規格は「100BASE-TX」「1000BASE-T」と高速化した。通信速度はそれぞれ100Mビット/秒、1Gビット/秒だ。現在のところ10Gビット/秒の「10GBASE-T」まで規格化が完了している。

図1●イーサネットのロードマップ
図1●イーサネットのロードマップ
米イーサネットアライアンスが公開した最新(2015年版)のロードマップ。現在は2.5G/5Gイーサネットや400Gイーサネットの開発を加速、2020年以降にT(テラ)ビット/秒クラスを目指す。
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 1Gビット/秒の1000BASE-Tが普及し始めた2000年前半から現在まで、世界中では毎年数十億mのツイストペアケーブルが利用されている。ツイストペアケーブルは対応可能な通信速度などによって「カテゴリー」に分かれる。各カテゴリーごとに利用できる回線帯域と距離に制限がある。主流は1Gビット/秒で最大100mまでの利用が推奨されているカテゴリー5eとカテゴリー6。現在は9割近くがこのタイプのケーブルだ(図2)。

図2●イーサネットケーブルの年ごとの売り上げ
図2●イーサネットケーブルの年ごとの売り上げ
カテゴリー5eのケーブルは減少傾向だが、カテゴリー6と合わせると新規に敷設されるイーサネットケーブルの大半を占めている状況は続いている。米ブロードコム、米シスコシステムズ、米デル、米HPの4社が英BSRIAに委託して調査し、IEEE 802.3NGEABT Study Groupで発表した結果を基に作成した。
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