N高等学校は高校卒業資格をこれから取得するあらゆる人に門戸を開く“ネットの高校”との位置づけの下、多様な課外授業を用意し、生徒の将来の可能性についても様々な道を用意する。長年にわたり小学校や高等学校で教鞭を執り、通信制高等学校での指導にも携わってきたN高等学校の学校長である奥平博一氏(写真1)に、N高等学校設立の目的や役割を聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=コンピュータ・ネットワーク局教育事業部)

写真1●N高等学校の学校長、奥平博一氏
写真1●N高等学校の学校長、奥平博一氏
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そもそも、なぜドワンゴが高校の運営に携わるのでしょうか。

 1年半前(2014年11月)、ドワンゴは(専門学校運営の)バンタンをグループ会社化した。バンタンは職業教育、それも現在一線で活躍している人を講師として招くということをしている学校であり、ドワンゴは元々職業教育に興味を持っていた。そしてドワンゴはネットを生業としている会社であり、その先には年齢層の若い、中高生がユーザーとして存在している。

 川上さん(カドカワ代表取締役社長の川上量生氏)は、「不登校の子は(ドワンゴの動画配信サービスを)よく見ているんじゃないかな」と言っていますが、直接そうしたサービスの先にいるユーザーにリーチして、彼らの持っている力を世の中に生かしていきたいとの思いが社としてあったと思います。

 その中で通信制高等学校という制度を使うことによって、ドワンゴが生業としているネットを使い、そしてコンテンツはKADOKAWAとの合流時期でもありましたので、KADOKAWAが持っている様々なコンテンツを融合して提供できる。なによりもユーザーにとって良いものを提供できる環境ができつつあったところであり、様々な要素が時期を同じくして重なっていった。

 私自身がドワンゴに来たのは1年半ほど前。元々教育関係の人間ですから、通信制高等学校を作るということで「いっしょにやらないか」とお誘いを受けてきた。

 その前にも私は他の通信制高校に関わっており、通信制の制度は有効なものだと考えていました。ただ本来の通信制、ネットと言った方がいいでしょうか、通信を使った“良さ”までは出せていなかった。これまでは「高卒資格を与える」ことだけに焦点が当たり、生徒はどちらかというと積極的ではない理由で通信制を選んできた。何らかの理由で高校を辞めなければならなかった、中学時代不登校で全日制高校に行けなった、しかたないから通信制――。そういうニュアンスが強かった。私は「通信制だからこそできることってあるよな」とふつふつと思っていることがあった。