社内では普通に会話ができるけれど、社外での振る舞いに自信のないITエンジニアも多いのではないでしょうか。年次や職位が上がると、会食をはじめ様々な社交の場に臨むことも仕事の一つになってきます。ここでは顧客との会食を例に、対外的な場での会話術を見ていきましょう。
どこがNG?
西新宿システムが担当したナカノシマ社の受発注システムの開発が無事完了し、プロジェクトの打ち上げが開催されることになりました。西新宿システムとナカノシマ社から数名が参加します。プロジェクトメンバの一人、西新宿システム入社2年目の高橋さんはお客様との会食に出席するのは初めてです。川村課長は、普段から大人しい高橋さんにとって他社の方とも話せる良い機会になると考え、参加するよう促しました。
川村「高橋さん、お客様との会食の場は初めてだよね。どう?ちゃんと話できそう?」
高橋「ぼくは話すのが苦手ですし、面白い話もできないですけど……」
川村「大丈夫よ。失礼なことさえしなければ、相手がお客様だからといって委縮せず、普通に話せばいいからね」
高橋「はい……」
会食が始まりました。高橋さんはビールを注ぐタイミングもつかめず、話にも入っていけないまま、ひとりで黙々と食事をしていました。すると、ナカノシマ社・右田課長が高橋さんの隣に移ってきて、話しかけてきました。
右田「高橋さんは若いみたいだけど、何年目?」
高橋「2年目です」
右田「仕事はどう?やりがいはある?」
高橋「まあまあです」
右田「まあまあ、か。今、何か取り組んでいることあるの?」
高橋「いや、特別には……プロジェクトも終わったばかりですし」
右田「確かに、終わったばかりだもんね。……何か趣味はあるの?」
高橋「趣味ってほどじゃないですけど、好きなのはカードゲームです」
右田「カードゲームか。ぼくはカードゲームのことはあまり知らないんだけど、どういうものなの?」
高橋「説明してもわからないと思います」
右田「……そう、か。それ、大勢でするもの?」
高橋「その時々です。だいたい4人ぐらいで」
右田「友だちとするの?」
高橋「友だちっていうか……」
右田「……あ、じゃあ、高橋さん、これからもよろしくね」
右田さんは、別の席に移っていきました。高橋さんはナカノシマ社の人とほとんど言葉を交わさないまま打ち上げ会は終了しました。