ITエンジニアの職場における悩みを聞くと、今でもコミュニケーションに関するものが数多く挙がります。詳しく話を聞いてみると、コミュニケーションの「相手」がどう感じているか、どう思うか、ということを「察する」力が足りないと感じることが多いのです。コミュニケーションは「向き不向き」ではありません。きちんと学べば獲得することのできる“スキル”なのです。

 第1回では、チーム作業において、相手に伝えた「つもり」なのに、伝えた通りの成果物が出てこないというケースを紹介しましょう。こうしたすれ違いは、誰しも経験があるのではないでしょうか。このケースでは、期待通りの結果を得るためのポイントを解説します。

 これまで30年にわたり、多くのITエンジニアたちと接してきました。2000年くらいまでは「そもそも他人と話すこと自体が苦手」「誰かと関わるのが苦手」といった「苦手」意識がコミュニケーションにおける課題の大半を占めていたように記憶しています。「人と話すのが苦手だから、コンピュータ相手の仕事をしている」などと言う人もいました。

 今世紀に入ったころから徐々に、人と会話すること自体には、さほど抵抗がないITエンジニアが増えてきました。笑顔で接し、他者の考えを聞いたり、自分の意見を述べたりすることも「避けたい」とは思わなくなってきているような気がします。