IoT(Internet of Things)は、古くからあるM2M(Machine to Machine)とセットで、「M2M/IoT」と書かれることが多い。書籍の表題にさえなっているほどだ。しかし、この「/」はどんな意味があるのだろうと、いつも思う。「=」なのか、「&」なのか、あいまいなまま使われていて気持ちが悪い。

 M2Mは、機械同士が通信し機器の制御などを効率的・効果的に行うもの。IoTはつながる対象がもっと広く、人も含めて生活やビジネスにかかわる多様なモノがネットにつながり、それらから収集した情報で利便性の向上や安全性の向上、コスト削減を実現することを言う。

 ここではM2Mも包含するものとしてIoTを定義する。そう考えるとIoTの歴史は古い。約20年前には自動販売機にPHS(Personal Handy-phone System)の通信モジュールをつけて売上・在庫管理の効率化に使われた。10年ほど前には、たばこの成人認証のため、数10万台の自動販売機に携帯電話モジュールが付けられた。

IoTをとりまく環境が大きく変わった

 10年前、20年前のIoTと現在のそれは何が違うのだろうか。環境が違うのだ。モバイルネットワークのコストが劇的に安くなり、通信モジュールも安価になり、収集した情報を分析するコンピューティングパワーや分析ソフトウエアもクラウドなどの利用で時間やコストをかけずに手に入れられるようになった。

 IoTを実現するための敷居が低くなり、どんな企業でもアイデアさえあればIoTを実現できるになったのだ。アイデアとは「IoTで何をやってどんな効果が得られるか」という目的を具体的に示すことだ。

 ITベンダーやコンサルタントは「とにかくIoTをやれ」「ビッグデータをやれ」と、目的の具体化よりも道具を売りたがる。だが、そこに具体的なアイデアがなければ、失敗するのは目に見えている。

 図9はIoTのモデルである。対象となるモノにはクルマや建機だけでなく、乳牛のような変わり種もある。乳牛の出産には人の介助が必要で、それがないと死産になるそうだ。乳牛のIoTの目的は死産をなくし損失を防ぐことである。そのために乳牛の体内に体温センサーを入れる。出産直前になると体温が下がる。それをワイヤレスネットワークを介して人に知らせるのだ。

図9●IoTのモデル
図9●IoTのモデル
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