企業ネットワークのモバイルシフトの目的は、より経済的で利便性の高いネットワークを実現することである。すでに個人世帯は光ファイバーを引き込まず、モバイルだけで済ますことが増えている。安いし、便利だからだ。企業においてもオフィスや店舗の回線をモバイル化することでコスト削減が図れるし、スマートフォンを使うとグループウエアや業務アプリの利用に加えて内外線の電話を安く便利に使うことができる。設備費用がかさむPHSや無線LANも安価なSIMが使えるモバイル網に移行することで費用を抑制できる。

 モバイルシフトで企業が使うべきは、インターネットに接続されていない閉域モバイルサービスである。セキュリティを維持しやすいだけでなく、パソコンやサーバー同様、プライベートIPアドレスをスマートフォンやルーターなどに付与して使えるので設計・運用をシンプルにできる。

 現在、大手通信事業者ではNTTドコモ、KDDI、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)、ソフトバンクが閉域モバイルサービスを提供している。MVNOでは、インターネットイニシアティブ(IIJ)やNECネッツエスアイなどが提供している。

 筆者はこれらの中でKDDIの「CPA」(Closed Packet Access、シーパと読む)とNTTコムの「Arcstar Universal Oneモバイル」(以下、UNOモバイル)が比較的優れていると考えている。以下、CPAとUNOモバイルを比較し、企業が閉域モバイルサービスを使ううえでのポイントや、閉域モバイルサービスの今後の課題を明らかにしたい。