筆者は1年前の2015年3月に「安さだけじゃない、『格安』SIMのインパクト」と題した特集で、格安SIMやSIMフリースマホを企業ネットワークでどう活用すべきか述べた。本特集はその続編である。実は昨年の特集を書く過程で、インターネットに接続しない閉域モバイルサービスの有用性に気が付いた。閉域モバイルとスマートフォンを組み合わせたスマホ内線システムを思いついたのだ。

 今回の特集では前回解説しなかった代表的な閉域モバイルサービスの仕組みや活用方法を事例に基づいて紹介するとともに、SIMフリースマホの最近の動向、格安SIMやSIMフリー端末をより経済的、効果的に使うためのポイント、さらには最近話題のIoTでの活用を紹介する。


第1回 企業ネットワークとSIMフリー端末、モバイルサービスの動向
第2回 主要な閉域モバイルサービスを解剖する
第3回 閉域モバイルで革新する企業ネットワーク
第4回 モバイルワーカーに最適なSIMと端末の使いこなしとは
第5回 IoTで生きる閉域モバイル


高性能化するSIMフリースマートフォン

 筆者はいつも講演や原稿を「企業ネットワークの動向」という図を使って始める。しかし今回は、分かりやすい身近なSIMフリースマートフォンの話から入ろう。

 1年前、私は妻の誕生日にファーウェイ製SIMフリースマホの「Ascend G620S」と、インターネットイニシアティブ(IIJ)がビックカメラに提供している格安SIM「BIC SIM」をプレゼントした。毎月6000円あまりかかっていたソフトバンクモバイルのiPhoneを解約し、データ専用のAscend G620Sと電話専用のソフトバンクのフィーチャーフォンの2台に分けた。BIC SIMはデータ3Gバイト+SMSでSIM利用料1125円(税込)、ソフトバンクの電話用SIMの利用料は1361円(同)である。データを3Gバイトも使うことはないので、毎月の請求額は1125円である。電話は家族との間はLINEだし、長電話する田舎の親族との通話はソフトバンク同士なので無料で済む。結果的に1500円程度しかかかっていない。6000円が2600円程度になったのだ

 1年使ってみて、2万3000円(購入当時)というローエンドのスマホながら、5インチの高精細な画面を持つAscend G620Sは故障することもなく快適に使えている。その様子を見て、我が家では「脱・iPhone」が起こってしまった。

 筆者の家族は大人6人、赤ちゃん1人だが、大人6人は全員iPhoneを使っていた。まず妻がSIMフリースマホに替えたのに続き、三男がグーグルのNexus 5Xに替えた。SIMはIIJmioである。IIJを選んだのも妻が快適に使えているからである。妻との違いは090番号で使える電話サービスがついている点で、月額料金は1600円である。電話はもっぱらLINEを使っているので090での通話料は微々たるものだ。

 さらに、次男夫婦がそろって富士通のArrows M02に乗り換えた。SIMはやはりIIJの1600円のプランである。結果的に6人中、4人が脱・iPhoneをしたことになる。これらはすべてソフトバンクだったので、ソフトバンクのSIMがNTTドコモのSIMに変わったことになる。

 これらのSIMフリースマホの位置付けを価格とCPU能力で表したのが図1である。妻のAsend G620Sは値下がりして14000円程度になった。メモリー1Gバイト、CPU 1.2GHz程度のローエンド端末は1年で約1万円安くなった。

図1●2016年春 SIMフリースマートフォンMAP
図1●2016年春 SIMフリースマートフォンMAP
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 昨年は3万円前後のミドルレンジの端末もメモリーは1Gバイトのものが多かった。しかし、現在は2Gバイトが一般的になっている。5万円程度のミドルハイのレンジではメモリー3Gバイトのものも現れた。ディスプレイも高精細になっている。

 このようにSIMフリースマートフォンは低価格化・高性能化が確実に進んでいるのだ。

 ちなみに図1に「映像インタフェース」の項目があるのは、筆者がスマホをパソコン代わりに利用することを考えているからだ。この点については第3回で詳しく述べたい。