ヒトやモノの空き時間を貸し借りするシェアリングエコノミーと呼ばれる経済圏が急拡大している。日本でもベンチャーが相次ぎ参入、既存企業にはない発想が支持されている。車や物件など「モノ」だけでなく、スキルや体験など「コト」を共有するビジネスが増えているのが日本の特徴だ。規制や既存勢力との対立を避け共存を狙うのも日本流。沸騰するシェアリングエコノミーの動きを追う。
「群馬県桐生市、美しい自然を走る『わたらせ渓谷鐵道』で結婚式をしませんか?」「東京都中央区、越前堀薬局隣接空きスペース(屋根付き)、1日3000円から」「わたしの30分、売ります」「初心者のためのバック転講座!」――。
どれも実際にネット経由で利用を申し込んだり購入したりできる「物件」だ。個人や企業の所有物を貸し借りする、いわゆる「シェアリングエコノミー」と呼ばれるサービスである。
貸し手の個人や企業は、自身が持つ遊休資産の情報をインターネット経由で公開。借り手は必要なサービスを選んで利用する。あくまで自身が持つ資産の空いている時間の範囲内で貸し出すところが、既存のレンタルサービスとの違いだ。
代名詞のように語られるのが民泊の米エアビーアンドビーと、自家用車をシェアする米ウーバーテクノロジーズだ。だが、シェアリングエコノミーはこの2社に限らない。日本でも多様な企業が勃興しつつある。
分野 | 企業名 | サービスの内容 |
---|---|---|
移動手段 | ディー・エヌ・エー | 自動車の個人間での貸し借りを仲介 |
ガイアックス | 帰省など長距離の自動車移動を想定したライドシェアサービスを運営 | |
コギコギ | 個人向けの自転車シェアサービスを運営 | |
建物・施設 | アキッパ | 個人の駐車場の空き時間を個人や企業に貸し出し |
スペースマーケット | 古民家や遊園地などの空き施設を企業に貸し出し | |
とまれる | 個人宅の宿泊を仲介する民泊事業 | |
軒先 | ビルの入り口や空き地などのデッドスペースを企業に貸し出し | |
中古品・二次流通 | ジモティー | 特定地域内での中古品の貸し借りや売買を仲介 |
チケットストリート | 音楽やスポーツ興業のチケット二次流通を仲介 | |
手伝い・代行 | アズママ | 子育て中の母親同士による送り迎えの仲介 |
エニタイムズ | 家事やペットの世話など日常的な雑事の依頼を仲介 | |
ココナラ | 特技や知識、スキルを500円から売買できるサイトを運営 | |
業務支援 | クラウドワークス、ランサーズ | システム開発やロゴデザインなどの業務依頼をネットで仲介 |
ラクスル | 運送会社の空き時間を生かした低価格運送サービスを運営 | |
体験 | ストリートアカデミー | ユニークなスキルや趣味の講座の講師と受講生をマッチング |
ハバー | 訪日外国人と個人の観光ガイドをマッチング | |
ライブシェア | 音楽やスポーツのイベントをいっしょに楽しむ仲間をマッチング |
空き施設に商機
オフシーズンのスポーツ競技場、平日の映画館や結婚式場、地方の公共施設や閑散期の観光施設。日本中にあるこうした遊休施設を貸し出すのがスペースマーケット(東京・新宿)だ。企業の会議室や結婚式、イベントなどの需要を見込む。2014年のサービス開始以来、利用者数は120万人を突破。登録施設数は4700件を超え、毎月数千件が成約する。