エンタープライズITで創造的な変革をもたらした製品・サービスの提供企業50社を表彰する「ミライITアワード 2016」。日経コンピュータが今回創設した表彰制度だ。「金融」の部門グランプリを受賞したのが、会計クラウド「freee」である。起業の思いを佐々木大輔CEO(最高経営責任者)が語る。
改めてなぜfreeeを起業したのかをお聞かせ下さい。
日本企業の労働生産性が海外に比べて劣っているとの危機感からです。特に中小企業の生産性を高めるお手伝いをしたかった。
起業前、私はグーグル日本法人で中小企業向けのオンライン広告事業に携わっていました。ところが足を運んでみると、日々の主なコミュニケーションツールがファクシミリという中小企業が少なくなかった。中小企業を指導する立場の方が必ずしもテクノロジーに強いわけでもない事実も浮かび上がってきました。
世界的には多くの中小企業がデジタルマーケティングで成功しているにもかかわらず、日本の中小企業はそもそもそれを実践できる段階にすら到達していない。なんとかしなければと思ったことが2012年にfreeeを設立した動機です。
そして会計クラウドというコンセプトを思いついたわけですね。
いわばfreeeは、ボーリングのセンターピンのような役割を果たすものなんです。どんな企業にも、モノを売るといった本業に加えて、やらなければいけない面倒くさいことがたくさんあります。経理、会計、資金調達、決済など、いわゆるバックオフィス業務です。
freeeはバックオフィス業務の根幹である経理を変えることで、ほかの周辺業務の効率化も一気に促せるのではないかという発想で開発しました。ピンが次々倒れて、ストライクをとるイメージです。
目指すのは経理業務の全自動化です。例えば多くの中小企業は請求書を受け取った後、どのような作業をしているでしょうか。恐らく資金管理のためのExcelファイルに打ち込み会計ソフトにも入力し、期日までにオンラインバンキングで資金移動の手続きをしているはずです。同じデータを7回も8回も登録しているのは無駄だと思いませんか。