「極言暴論」の木村岳史編集委員の講演をITpro上で再現する特集「極言暴論ライブ」も、今回がいよいよ最終回。前回は「デジタル時代に用済みとなるIT部門」の実相を紹介したが、最終回ではSIerの人月商売の問題に切り込み、SIerもデジタル時代に用済みとなる可能性に言及する。辛口の木村編集委員には珍しく、IT部門とSIerにエールを送った。 (ITpro)


 ユーザー企業では、事業部門がIT部門をスルーして、自らの予算でビジネスのデジタル化を推進したり、デジタルビジネスに取り組む第2のIT部門を設置したりしているわけですから、SIerなどITベンダーは旧来のお客であるIT部門に義理立てしている場合ではありません。事業部門のほうにとっとと営業、提案に行かなければならないということです(スライド1)。

スライド1
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 さらに、デジタルビジネスの時代なのにSIerは人月商売をIT業界の多重下請け構造を利用して続けていてよいのでしょうか、ということですよね。SIビジネスは人月商売ですが、「おっしゃっていただければ何でもやりますよ」といった御用聞き商売でもあります。でもね。「SIビジネスは御用聞き商売だ」と言い続けていたら、最近、怒られました。

 誰に怒られたかというと、IT業界の人じゃないですよ。業種は言いませんが、プロの御用聞き商売の人にです。「本物の御用聞きというのは、お客さんの注文を待っているだけの甘い仕事じゃない! お客さんが何も言わなくても、隠れた要望を察知して対応するなど、かゆいところに手が届くようなサービスを提供するのが本当の御用聞きだ」。少し反省しました。

 で、「御用聞き」という言葉を使わず、別の言葉を使うことにしました。「ガキの使い」です(場内失笑)。ユーザー企業の要求を聞き取って、大した付加価値も付けずに、下請けのITベンダーの技術者に作らせているようでは、ガキの使いです。ソリューション提案だと力んでも、コンサルティングのように提案料をもらえるわけではありません。結局、付加価値の付かない人月商売でお金をもらっている。

 このまま御用聞き、じゃなかったガキの使いのように、人月商売に明け暮れているようでは、ITベンダーには先がありません。冒頭でお話したように、ユーザー企業の経営者は東京オリンピック以降の厳しい経済状況を予測し、ビジネスのイノベーション、つまりビジネスのデジタル化を大きな経営課題として取り組むはずです。ですから、IT投資のトレンドはこの5年で大きく変わります。