好評を博した木村岳史編集委員の講演「極言暴論ライブ」をITpro上で完全再現する特集記事。今回は多くのIT部門が抱えている問題を深掘りした後、いよいよこの講演のテーマの一つ「デジタル時代に用済みとなるIT部門」の実相を紹介する。製造業の大企業などで実際にIT部門を襲った“悲劇”をベースにしているため、迫力満点の話が続く。(ITpro)


 デジタルビジネスの時代を迎え多くのユーザー企業で、劣化したIT部門は経営層からあまり期待されず、事業部門にも相手にされない状況に陥っていることを述べてきました。実は、今のIT部門は2つの異なる問題を抱えているといます。1つが従来から言われてきたトラディショナルな問題。もう一つがデジタルビジネスに関わる新しい問題です(スライド1)。もちろん、両者は絡み合っていますが。

スライド1
スライド1
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 IT部門のトラディショナルな問題というのは、この10年、20年で進んできた組織の経年劣化です。特に大企業のIT部門は、基幹系システムの開発に追われていた時期にはそれなりの人員を抱え、少なくともシステムの要件定義や設計などを自ら手がけ、全部ではないにしても、自らの手を動かしてプログラミングを行ってもいました。つまり内製力があったわけです。

 新規にシステムを開発するためには、そのシステムを利用する事業部門や経営層とコミュニケーションを取り、業務のどの範囲をシステム化するのか、どんな要件があるのかなどについて事業部門や経営と詰めていく必要がありますから、IT部門は社内での意思疎通が十分にできていた。内製力がありますから、ITベンダーに丸投げすることはなく、ベンダーマネジメントもしっかりできていました。

 ところが、ERP(統合基幹業務システム)の導入が進み、いわゆる2000年問題への対応が終わった頃から、ユーザー企業、特に製造業でIT部門の仕事がどんどん無くなりました。大規模なシステム開発が一巡し、既存のシステムの保守運用がIT部門の主たる業務になったわけです。経営が「IT部門に余剰人員あり」としてリストラを進めたこともあり、IT部門は急速に内製力を失い、劣化が進んでしまったのです。

 大企業でCIO(最高情報責任者)やシステム部長を経験した年配の方が「自分たちの時と比べて、今のIT部門は情けない」と悲憤慷慨するのは、このトラディショナルな問題への嘆きです。つまり、こうした方々を含め“IT部門再建論者”の多くは、従来の基幹系システムを担う存在として強いIT部門の復活を説くわけです。