2020年までの残された期間に何もしなければ、本格化する少子高齢化で市場が急速に縮小し、日本や日本企業は奈落に落ちる――。2015年末の「極言暴論ライブ」の講演で、そう警鐘を鳴らす木村岳史編集委員は、グローバルで進むデジタル化のトレンドに話を移した。その激流に飲み込まれた家電産業などを引き合いに、日本企業がいま取り組むべきことを説く。

 そのキーワードは「本業のIT化」「ユーザー企業のITベンダー化」だ。IT産業と他の産業の垣根が溶解する時代に、ユーザー企業やITベンダーは何をなすべきか。ITproの人気コラム「極言暴論」で鍛えた舌鋒で語る講演は、いよいよデジタル化の核心に迫る。(ITpro)


 「何もしなければ企業は奈落に落ちる」と多くの経営者が危機感を持ち、デジタル化というビジネスのイノベーションを実現しようとしている。そのような話をしたわけですが、それを待つことなく、既にデジタルの奔流に飲み込まれて、大変なことになっている産業もあります。

 ビジネスのデジタル化というのは、よく言われることですが、「モノからコト(≒サービス)へ」のトレンドでもあるわけですよね(スライド1)。家電王国とまで言われた日本の家電産業はものづくりにこだわり、モノを核に様々なサービスを提供するという発想が無かったために、新興国のメーカーの追い上げを受け大変な事態に陥りました。

スライド1
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 しかも、アップルがiPodやiPhoneを生み出し、家電の世界に攻め込んできました。本来なら日本の家電メーカーがデジタル化、つまりビジネスをサービス化して創り出すべき市場だったと思いますが、その多くがアップル、そしてグーグルなどのものになったわけです。

 そう言えばiPod、そしてiPhoneなどスマートフォンは、多くの既存の市場を破壊しましたね。例えばソニーが創り育ててきた市場は、iPodと音楽配信サービスにより、すっかり塗り替えられてしまいました。そして今、デジカメ、特にコンパクトデジタルカメラのビジネスが、スマホの普及により、どんどん厳しくなりつつあるわけです。