「いつまで待っても、決定版のビジネスチャットツールが出てこない。だったら自分たちで作るか! となって、開発が始まった」。

 こう話すのは、ChatWorkの山本敏行代表取締役社長。同社が運営する「チャットワーク」は、2011年3月に社内の経験が元となって生まれたサービスだ(写真1)。

写真1●ビジネス向けのチャットツール「チャットワーク」
写真1●ビジネス向けのチャットツール「チャットワーク」
(出所:ChatWork)
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 当時はLINEもまだサービスを開始しておらず、コミュニケーションツールとしては業務でもプライベートでもメールが一般的だった。だがChatWorkの前身企業EC studioでは、以前から業務に「Skype」などのチャットツールを活用していた。

 個人向けのチャットツールは、業務に使うには不足がある。ユーザーとしてチャットを使い込んでいた経験を武器に、自社で新サービスを開発することにした。

 開発を主導したのは、山本社長の弟で専務取締役CTO(最高技術責任者)の山本正喜氏。ITに長けた弟に、元々ITが不得手だったという兄が「自分のような人でも使えるツールを」と要望し、チャットワークが生まれた(写真2)。

写真2●ChatWorkの山本敏行代表取締役社長(右)と、弟で専務取締役CTOの山本正喜氏
写真2●ChatWorkの山本敏行代表取締役社長(右)と、弟で専務取締役CTOの山本正喜氏
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 リリース後急速にユーザーの支持を集め、2012年には社名をChatWorkに変更。ビジネスチャット分野に事業を集中させている。

 国内でも、[2]で取り上げた「Slack」が技術者を中心に人気を博すなど競争は激化しているが「チャットワークは、ビジネスサイドをターゲットにしたツール。業務部門の人も、快適に使いこなせることを目指している」と山本社長は話す。ビジネスチャットの活用が広がっているとはいっても「まだまだ普及していない。競合と一緒に、市場を作っていく段階だ」(山本社長)と、市場の活性化を歓迎する。