第2回は、スマホからデータを送信する処理を追います。まずは全体の流れを把握しておきましょう(図1-1)。スマホのWebブラウザーを使って、モバイル回線経由でインターネット上のWeb サーバーにアクセスするまでの過程をたどってみます。

図1-1●スマートフォンの構成要素と送信処理の流れ
図1-1●スマートフォンの構成要素と送信処理の流れ
送信処理を行う構成要素と、主な役割を示した。第2回と第3回では、処理の流れに沿って、①ベースバンドプロセッサー、②RFトランシーバー、③フィルター、④パワーアンプ(PA)、⑤アンテナ―の5つを見ていく。デュプレクサーとアンテナスイッチについては、第4回と第5回で取り上げる。
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 出発地点はアプリケーションプロセッサーです。ユーザーがWebブラウザーを操作すると、アプリケーションプロセッサーがその内容に応じて、OSに含まれるTCP/IPソフトを使ってIPパケットを組み立てます。

 そのIPパケットをモバイル通信用の電波に載せる信号へ変換するのがベースバンドプロセッサーの役割です。そして、その信号を電波で送信できるように、RFトランシーバーが周波数を高めます。

 ただ、こうして作られた信号には、外に放出してはいけない周波数成分が含まれています。それを取り除き、必要な信号だけを取り出すのがフィルターの役目です。取り出した信号をパワーアンプ(PA)が増幅して、遠くまで飛ばします。

 アンテナは送信と受信で共用するので、両者の信号が混ざらないように分ける必要があります。それはデュプレクサーの仕事です。

 図1-1では省略していますが、フィルターやPA、デュプレクサーなどの部品は、通信に使うバンドや通信方式ごとに用意する必要があります。それらを切り替えるのがアンテナスイッチです。そして、データを載せた電波がアンテナから送信されます。

 以降では、①ベースバンドプロセッサー、②RFトランシーバー、③フィルター、④パワーアンプ、⑤アンテナ──の順にそれぞれの部品を見ていきましょう