ロボットを動作させるための機能を、クラウドから提供する。これが「クラウドロボティクス」と呼ばれる技術の基本的な考え方である。データを演算処理してその結果を基にロボットに指示を与える「脳」の機能を、クラウドに置くイメージだ。

 クラウドから機能を提供するメリットは多くある。最も大きいのは、高性能のハードウエアやソフトウエアを、ロボット自体に搭載する必要が無くなることだ。ハードやソフトは性能が高くなくても、クラウドにある「脳」がネットワークを通じて制御することで、高性能なロボットと同レベルの動きが可能になる。複数のロボットに、同じ作業を指示しやすくなるのも利点だ。

 例えば機械学習を利用する場合、膨大なデータを高速で演算処理する必要がある。この処理をロボットだけで済ませようとすると、高性能なCPUをロボットに実装する必要がある。しかし、クラウド上の並列分散処理技術を使って処理すれば、その必要は無くなる。

 ロボット向けアプリケーションも開発しやすくなる。必要な機能モジュール群をクラウド上にあらかじめ用意し、オープンソースとして公開すれば、以前より容易にアプリを開発できるようになる。加えて、ロボットを通じて収集したデータの分析結果を、クラウドを通して共有しやすくなる。

PaaSでクラウドロボティクスを提供

 クラウドロボティクスを使ったPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を開発するのがRapyuta Robotics(ラピュータ・ロボティクス)だ(写真1)。2014年設立のベンチャー(本社・東京)。PaaSを従量課金制のパブリッククラウドとして提供する。AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)か、Microsoft AzureなどのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)上に、開発環境を用意する。利用者は、必要なアプリケーションをクラウド上で構築できる。

写真1●ラピュータ・ロボティクスのメンバー。中央がクリシナムルティ・アルドチェルワン代表取締役 COO
写真1●ラピュータ・ロボティクスのメンバー。中央がクリシナムルティ・アルドチェルワン代表取締役 COO
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 このPaaSでは、ロボットが自律的に動作するための機能モジュール群をあらかじめクラウド上に用意。例えば、画像認識機能やセンサーデータの収集、端末の制御機能などである。ドローンであれば、自律飛行に使用するための地図や経路計画作成機能なども含める。