日本の小型ロケット「イプシロン」。プロジェクトマネージャを務める宇宙航空研究開発機構(JAXA)の森田泰弘教授は「将来的にはROSE(AIに進化させるロケット搭載システム)が点検してくれるので、打ち上げはノートPCだけで行えるようになる」と語った。森田教授にイプシロンのコンセプト、システム障害の経緯などについて聞いた。
――イプシロンでは打ち上げシステムも含め全体最適を実現したとするが、その意味は?
ロケットは従来からトータル性能が最大になるように全体が最適化されている。ただ、ロケットの最適化はこれまで、性能だけの最適化だった。
イプシロンでは運用面や設備、そしてユーザーから見たロケットの使いやすさを含めた全体を最適化した。さらに性能についても、コスト面も含めて、つまりコストパフォーマンスの観点から最適化を追求した。
要するに打ち上げ頻度を上げられるような仕組みを作ろうとしたわけだ。低コスト化だけでなく、使いやすく簡単に打ち上げられなければならない。
今のロケットはどんなに頑張っても発射台での作業に1カ月はかかるので、年10機以上の打ち上げはできない。1週間で打てるようになれば、それこそ年間で30機以上を打ち上げられる。そこに、イプシロンのブレークスルーがある。
――イプシロンの機体については、既存のロケットの技術を可能な限り転用したと聞く。
その通り。そうした土台の上で新しいことをやろうというわけだ。今のイプシロンは試験機なので、開発予算上「モバイル管制」など新しい仕組みを開発することで精一杯だった。今後、何機か打ち上げながら、より高性能で低コストの機体の開発へとつなげたい。
もちろん現時点でも、ベトナムやタイなどアジアの打ち上げ案件は取っていくことになる。今後の商用利用に向けて、今は助走期間という位置づけだ。