小型ロケット「イプシロン」における大きなチャレンジは、「巨大な管制室をノートPCに置き換える」ことだ。それにより打ち上げ作業の効率化を図り、低コストで多頻度の打ち上げを可能にする。そのモバイル管制の要となるのが、“イプシロンの人工知能”と注目された「ROSE」と呼ぶロケット搭載システムだ。


 打ち上げの効率化の要は、もちろんモバイル管制などを実現したシステムである。

点検作業を自動化・自律化

 システムは、イプシロンの機体に内蔵した「ROSE(Responsive Operation Support Equipment:即応運用支援装置)」と、管制センター内に置いた「LCS(Local Control System:発射管制装置)」から構成される()。ROSEは、「イプシロンの人工知能(AI)」として注目されている装置だが、当時の打ち上げ時点ではまだそのレベルには達していない。

図●AI(人工知能)機能などにより、ロケット点検作業の自動化・自律化を実現したシステムの概要
図●AI(人工知能)機能などにより、ロケット点検作業の自動化・自律化を実現したシステムの概要
イプシロンに「ROSE」と呼ぶシステムを搭載し、地上のシステムと連携することで発射直前まで機体の健全性の点検を自動的に行う。将来的には全ての処理をROSEで実行できるようにする
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 ROSEとLCSが連携して実現するのは、点検手順の実行、値が一定の範囲に入るかどうかで正常かそうでないかを確認する閾値判定、作業記録を行う自動点検機能と、「何らかの異常が発生している可能性があるか」といった評価などを行う自律点検機能だ。

 現時点で実装できているのは自動点検機能で、カウントダウン中などの点検作業を自動化する。この結果、打ち上げ管制に必要な要員の大幅な削減が可能になった(写真)。

写真●イプシロン管制センターと 打ち上げ直後の様子
写真●イプシロン管制センターと 打ち上げ直後の様子
センター内の要員は先代の固体ロケット「M-V」の10分の1となり、ノートPCだけで打ち上げ管制が行えるようになった
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