2013年9月に打ち上げに成功した日本の小型ロケット「イプシロン」。2016年度には打ち上げ能力を向上させた2号機を打ち上げる。このロケットの真髄は、ITをフル活用してコストを劇的に削減したことにある。

 AIやIoT活用の先行事例とも言える初号機の打ち上げについて、打ち上げ延期を招いたシステムトラブルの経緯や原因も含め全貌を改めて紹介する(本記事は日経コンピュータ2013年11月14日号の特集を基に、最新情報を加筆・修正したものです)


写真●2013年9月に打ち上げられたイプシロン試験機 (写真:JAXA)
写真●2013年9月に打ち上げられたイプシロン試験機 (写真:JAXA)
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 「すごい!」。2013年9月14日14時、轟音とともに上昇するロケットに、全国から詰め掛けた2万人の見物人から大歓声が上がった。

 「イプシロンロケット」が鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた瞬間だ(写真)。打ち上げ中止でため息と落胆に包まれた8月27日とは打って変わり、町中がお祭り騒ぎとなった。打ち上げから1時間後、イプシロンは搭載していた惑星観測衛星を予定軌道に投入し、打ち上げは成功した。

 イプシロンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がIHIエアロスペースとともに開発を進めてきたロケットだ。1.2トンの人工衛星を軌道に乗せることができる小型ロケットだが、従来のロケットとは全く異なる発想で開発された。それは、ITをフル活用し1カ月以上かかっていた打ち上げに要する期間を1週間に短縮するなど、打ち上げ作業の徹底的な効率化が図られていることだ。