ECの世界ではデジタルコミュニケーションの特性を活かした多様なモデルが生まれている。主なECのモデルの現状を整理してみよう。

ECの様々な事業モデル
名称内容
ギャザリング購入希望者が増えるほど価格が下がる
オークション出品されている商品に入札し、最も高い価格を提示した人が購入できる
越境EC国境をまたいで海外のECサイトに出品したり出店したりする
コーディネートアプリ着こなしに関する情報や写真の共有サービスを通じて衣類を販売する
サブスクリプションコマース毎月定額の料金を払う顧客へお薦め商品を送付する
フラッシュセールス時間や期間を限定して特売する
テレビ連動放送中の通販番組で紹介している商品をスマホを通じて販売する
クラウドファンディング新製品の開発資金という名目で事実上の予約販売をする

ギャザリング:販売と広告宣伝を一体化

 多くの購入希望者が集まるほど、商品の値段が下がるという仕組みの販売形態。スマホが登場する以前のフィーチャーフォン時代に、モバイルEC事業者のネットプライスなどが取り入れて大いに流行したモデルである。

 ギャザリングはECに広告宣伝の仕組みを組み合わせた。購入希望者にとっては、安く買うためになるべく多くの友人や知人を集める方向にモチベーションが働き、商品の販売自体がプロモーションになるからだ。広告宣伝費を消費者に還元するモデルとも言える。エンターティメント性があるため、若い女性向けの商品で流行した。事業者側からしても商品のロットを一度に売り切ることができるメリットが存在する。

オークション:個人間取引をネットで

「ヤフオク!」は個人間ECの代表的存在
「ヤフオク!」は個人間ECの代表的存在
(出所:ヤフー)
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 出品されている商品に入札し、最も高い価格を提示した人が購入できるモデルで、ECの初期から利用されてきた。特にC2Cと呼ばれる個人間ECとして利用が広がったが、事業者が正規ルートではさばけないような在庫処分品を販売することもあり、新品から中古まで幅広い商品が流通されている。

「ヤフオク!」は個人間ECの代表的存在
「ヤフオク!」は個人間ECの代表的存在
(出所:ヤフー)
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 一時は詐欺が多発したが、現在では写真の画像認識技術や事業者が取引の安全性を保証するエスクローサービスなどの工夫で安全に利用できる環境も整ってきた。市場規模は1兆円を超えるとみられる。

 数あるオークションサービスの中でも、ヤフーが運営する「ヤフオク!」は圧倒的な強さで広がってきた。中古本を取り扱うブックオフコーポレーションと資本・業務提携。同社が消費者から買い取った商品をヤフオク!上で販売するサービスを展開するなど、事業を拡大している。

 一方で、スマホ時代になるとヤフオク!一人勝ちの状況に変化が見え始めた。消費者同士が手持ちの古着やアクセサリーを直接売買するフリマ(フリーマーケット)アプリの台頭だ。メルカリをはじめとするフリマアプリのサービスが多数登場し、LINEも参入するなど急速に利用者を増やしている。

越境EC:爆買いの先にある需要を見込む

 国境をまたいで海外のECサイトに出品したり出店したりする販売形態。注目を集めつつある理由は、日本を訪れた中国人観光客のいわゆる「爆買い」の先をにらんだ動きのためだ。日本で大量に買い物をした中国人が、帰国後に本人や周囲の知人が現地からネットで購入できるようにすることで、ネット上でも爆買いを狙うというわけだ。

 越境ECについては2010年ごろに楽天とヤフーが相次いで中国に進出。それぞれ現地の有力ネット事業者と組み、日本の出店者が中国で販売できるサービスを提供したものの、2年も経たずに撤退するなど思うような成果がでなかった。ここへきてようやく楽天の海外販売サービス「Rakuten Global Market」の売上高が拡大基調になるなど、海外向け越境ECは広がりつつある。

 経済産業省の調査では2014年の日本から中国への越境ECの市場規模は前年比55.4%増の6064億円。日米中3か国間における越境ECによる購入総額合計は、2018年までに約4.4兆円にまで拡大するという。