農業ベンチャーのUPFARMが、デンソーウェーブなどと組みコメの流通に新風を吹かせようとしている。QRコード(2次元バーコード)とクラウドを活用し、生産者から消費者の手元に届くまでの間で混ぜ物をするなど流通業者が不正を働くことを困難にした。日本で初めて偽装を防ぐQRコード(2次元バーコード)を採用することで実現している。

写真●UPFARMが新サービスに当たって開設した認定精米工場(大阪・吹田)
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写真●UPFARMが新サービスに当たって開設した認定精米工場(大阪・吹田)

 日本人の主食であるコメを巡っては食の多様化に伴って、需要が年々低下している。そんな中2月4日、環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する日米など12カ国が協定に署名し、米国とオーストラリア向けに輸入枠が設定されることが決まった。UPFARMは、ITの力を借りることで安全かつ美味しい点を国産農家がアピールできる環境を整え、競争力のある魅力的なコメを消費者に届きやすくすることを目指す。

コメの価格を決めるのは農家

 「消費が低迷し、価格が下落。儲からないから旨いコメを作ろうとしなくなり、若い働き手を呼び込むだけの魅力が失われていく。当然高齢化が進み、耕作放棄地が増える。悪循環に陥っている」。UPFARMの高橋隆造社長は、今の日本のコメ農家が抱える問題をこう分析する。

写真●スーパーに働きかけ、専用の什器を使ってコーナー展開する計画
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写真●スーパーに働きかけ、専用の什器を使ってコーナー展開する計画

 2015年12月に開始した安全安心のためのコメ流通プラットフォーム「米百選」は、安全安心で消費者のコメに対する見方をがらりと変えたいとの思いから開発したサービスだ。「国はさまざまな政策を打ち出しているし、農協もがんばっている。ただ全体がうまく回っていないのではないか。ITというスパイスを加えることで、悪循環を断ち切りたかった」(高橋社長)。

 米百選の特徴は、全国の味自慢のコメ農家が自由な売価で高級スーパーなどの販売店に卸すことができる独自の流通網を構築した点だ。産地保証をうたい文句に消費者にアピールするため、専用の統一パッケージやスーパーに設置するおしゃれな専用什器にもこだわった。