第2回は、メーカーの「モノ」の知見に「ネット」の知見をプラスする重要性を見ていきます。ここで言う「ネット」とは、通信ネットワークに加え、Webサービスやスマホアプリの話まで含む広義の言葉と考えてください。

 今回紹介する事例は、自社製品(センサー)をIoTサービス化させリリースしていたメーカーB社を支援し、売り上げを60%増加させたというものです。

 昨年B社は、今まで手掛けていた家庭向けのセンサーを活用し、新たなIoTサービスを独自で開発し、提供していました。IoTサービスを作るためには幅広い知見が必要ですので、これを1社で作るのはそうそうできることではありません。

 早速そのサービスを見せてもらったのですが、その際、担当者の加藤さん(仮名)の表情は浮かないものでした。

加藤 :自社のセンサーをインターネットにつなげられるようにし、データをいつでもスマホのアプリから見られるようにしました。今までのセンサーとは差別化が図れていますし、もっと売れると思ったのですが…。

飛弾 :確かに他社の類似センサーとは一味違うものになっていると思います。しかし、センサリングしたデータを単純にスマホで数値・グラフとして見られるだけでは、サービスと呼ぶには少々物足りないかもしれません。ちなみに、これを作るに当たって、ターゲットの属性や利用シーンなどを深掘りされましたか?

加藤 :いや、そこまでは…。うちでは今まで万人が使うようなセンサーを作ってきたし、ターゲットを考えるとしても、性別・年代とそのプラスアルファくらいしか…。

飛弾 :なるほど、そうなんですね。ただ、IoTサービスとなると、今までと同様にやっていればよいものではないと私達は考えています。

加藤 :と言いますと?

飛弾 :IoTサービスは、どちらかと言うとWebサービスと似通っています。例えばニュースサイト1つ見ても、時事ネタが多いのか、スポーツネタが多いのか、技術ネタが多いのか…など様々です。想定ターゲット、利用シーン、ユーザーへの提供価値など、一貫性のある考えが裏側に用意されているからこそ、各サービスに特徴が出て、使いたくなるものとなります。

加藤 :そういうことですか…。

飛弾 :当社はこれまでWebサービスを数多くリリースしてきた経験があります。ですから、そういった一貫性のある考えを軸に商品企画・プロモーション企画を行うことに慣れているわけです。そして、このサービスの肝であるスマホ用アプリを高機能化させることも可能です。

加藤 :なるほど、では飛弾さん、うちのこのセンサーでどんなIoTサービスが作れるのか簡単に提案してくれませんか?

 それからおよそ10日後、当社からリニューアルプランを持参し、提案を行いました。加藤さんはこの提案を気に入り、そして当社とB社が共同でサービスの方針・仕様からアプリ開発、プロモーションまで、一から作り直していくことになりました。

 発注していただいてから約半年後にサービスはリリースされ、冒頭にも述べたように、出来上がったサービスの売り上げは実に以前の約60%増となったのです。