「国際的ハッカー集団アノニマスがイスラム過激派組織『IS▼』に宣戦布告」──。2015年2月、このような報道が世間をにぎわせました。
アノニマスは元々、「情報の自由」という大義を共有した抗議集団です。今では、環境問題や人権問題、国に対する不満なども抗議対象になっています。また抗議方法は、ハッキングだけではありません。アノニマスを「国際的ハッカー集団」と呼ぶのは適当ではないと私は考えます。
誰でもアノニマスになれる
アノニマスの本来の意味は、「2ちゃんねる」の「名無しさん」のようなものです。その活動は、2003年頃に開設した米国の掲示板「4chan」でのやり取りが起源とされています(図1)。「Anonymous(匿名)」で掲示板に書き込んでいた人たちが集団で抗議活動する際に、Anonymousをそのまま名乗ったのです。この抗議活動が、2006年頃から「アノニマス」という特定の集団によるものとみられるようになりました。
アノニマスは抗議したいことがあると、インターネット上で賛同者を募ります。抗議したいと思った人は、誰でも参加できます。実は自分がアノニマスだといえばすぐにアノニマスになれるのです。
アノニマスが有名になったきっかけは、2008年に実施した米国の新興宗教「サイエントロジー」への抗議活動です。サイエントロジーに関する映像がYouTubeにアップされ、サイエントロジーがYouTubeに圧力をかけて映像を削除しようとしました▼。これにアノニマスが反発し、世界中で大規模なデモが起きたのです。
日本では、2012年の違法ダウンロードに関する刑罰化▼に反対する抗議活動「Operation Japan」が話題になりました。最近では、冒頭で触れたISメンバーのSNS▼アカウントを停止させる目的の「Operation ISIS」が有名です。
穏健派と武闘派がいる
アノニマスは、どんな抗議活動を行うかによって大きく2つの派に分かれます。合法的に抗議する穏健派の「アノンネット(AnonNet)」と、(D)DoS▼などのサイバー攻撃を行う武闘派の「アノンオプス(AnonOps)」です。皆さんがイメージするアノニマスは、後者が多いのではないでしょうか。アノニマス全員が武闘派というわけではないのです。
アノニマスの抗議方法は、大きく6つあります(図2)。(1)デモ、(2)情報公開、(3)サービス停止攻撃、(4)改ざん、(5)特定、(6)ツイート攻撃──です。